7弦ギター奏者ギリャルメ・ラマス『Bem acompanhado』
ブラジルの7弦ギター奏者/作曲家ギリャルメ・ラマス(Guilherme Lamas)の『Bem acompanhado』(2022年)は、7弦ギター(Violão de sete cordas)をブラジルの大衆音楽にとって重要な楽器に引き上げた偉大なギタリストたちに敬意を込めて作られたハイレベルなオリジナル・ショーロ曲集だ。
すべての収録曲はギリャルメ・ラマスによって作曲されており、構成も演奏も伝統的なショーロの王道を行く。バンド編成は曲によって少しずつ異なるが、7弦ギターを中心にフルート、パンデイロ、サンフォーナ(アコーディオン)といった楽器での軽やかなアンサンブルが心地よい。
(1)「Pescador de lambari」はサンパウロの公立音楽学校であるタトゥイ音楽院のショーロ・アンサンブルの功労者であるアレシャンドリ・バウアブ・ジュニオール(Alexandre Bauab Jr.)に捧げられた楽曲で、明るい曲調のなかに潜むサウダーヂがなんとも堪らない上質なショーロだ。パンデイロが刻むリズムの推進力、優雅なアコーディオンとフルート、そしてバイシャリーアの低音からコード、メロディーと複数の音楽的役割をこなす7弦ギターの魅力が満載。
ルイジーニョ・セッチ・コルダス(Luizinho 7 Cordas)に捧げられた(2)「Choro de todos os Santos」は7弦ギター、フルート、パンデイロのトリオ編成。つづくボゾ・セッチ・コルダス(Bozó 7 Cordas)に捧げられた(3)「Mano Bozó no 7」は最低限のパーカッションのみを伴奏させた、ほぼ7弦ギターの独奏曲で、ギリャルメ・ラマスの技巧を堪能できる。
(4)「Choro pro César」は最高のショーロ・バンドのひとつであるエポカ・ヂ・オウロ(Epoca de Ouro)のメンバーであり、パウリーニョ・ダ・ヴィオラ(Paulinho da Viola)の父親として知られるセザール・ファリア(César Faria)に捧げられた楽曲。
(5)「Zé causando na pista」はサンパウロで活躍するギタリスト、ゼ・バルベイロ(Zé Barbeiro)に捧げられた曲で、早いテンポとスリリングなコード進行が魅力的だ。
今作中唯一、エロア・ゴンサウヴェス(Eloá Gonçalves)が弾くピアノが聴けるのが(6)「Uma valsa em Realengo」。ピアノとギターのデュオによる美しいショーロ・ワルツで、互いに語らい合う、会話のキャッチボールのような演奏が披露される。
おそらくはブラジルの7弦ギタリストとして最も重要な人物であり、夭折の天才として世界的に知られるハファエル・ハベーロ(Raphael Rabello)には(7)「Vento na madrugada」という楽曲が捧げられた。この曲は7弦による完全なる独奏で、「夜明けの風」のタイトルとも相まって様々なイメージを想起させる素晴らしい演奏となっている。
つづく(8)「Obrigado, Dino」はそのハファエル・ハベーロが強く影響を受けた7弦ギターの先駆者のひとり、ヂノ・セッチ・コルダス(Dino 7 Cordas)に捧げられている。タイトルもそのまま「ありがとう、ヂノ」と彼への感謝を示すもので、本作でも感じられる通りヂノの大いなる影響下にあるギリャルメ・ラマスらしいバイシャリーアを聴くことができる。
ラストの(9)「Tem roda na roça」は現役最高峰の7弦奏者アレサンドロ・ペネッシ(Alessandro Penezzi)への讃歌。流麗なアコーディオンとフルート、力強いパンデイロとともに多幸感のうちにショーロの宴を締めくくる。
Guilherme Lamas – 7-string guitar
Eloá Gonçalves – piano (6)
Gabriel Rimoldi – flute (1, 2, 5, 8, 9)
Matheus Kleber – accordion (1, 5, 8, 9)
Roberto Amaral – pandeiro (1, 2, 3, 4, 5, 8, 9)
Xeina Barros – percussion (3, 4)