55年の歴史を誇る超正統派ショーロバンド、エポカ・ジ・オウロの2019年最新作

Epoca de Ouro - De Pai Pra Filho

日本でも人気のショーロバンド、エポカ・ジ・オウロ最新作

1964年にジャコー・ド・バンドリンによって設立され、2019年で結成55年目となる伝説的ショーロバンド、エポカ・ジ・オウロ(Conjunto Epoca de Ouro)が新譜『De Pai Pra Filho』をリリースした。

収録されている楽曲はジョヴェンティーノ・マシエル(Juventino Maciel)の作品が多くを占め、他はCristóvão Bastos、Luís Barcelos、João Lyra といったあまり知られていない作曲家たちの作品と、現在のバンドメンバーによるオリジナル曲で構成されている。

よく知られている曲はなく、全体的に地味な印象を受けるものの、ショーロの伝統から外さない、朝のコーヒータイムといったステレオタイプなシチュエーションを含め、日常のリラックスしたあらゆる場面に最適な音楽としてもっと知られているべき作品だと思う。

エポカ・ジ・オウロ。日本でも人気のショーロバンド

バンド名のエポカ・ジ・オウロとは、「黄金の時代」の意味。ショーロの一時代を築いた名バンドリン奏者のジャコー・ド・バンドリンが創ったグループであり、メンバーを変えながら今日まで世界中にショーロというブラジル伝統の音楽を発信し続けているグループだ。

日本に彼らの名が知れ渡ったのは2001年作『Cafe Brasil』。アーティスト名義はApple Musicなどでは「Various Artists」となっているが、多数のゲストを迎えながら演奏の中心はエポカ・ジ・オウロだ。この作品はブラジル版のWikipediaによると日本で25,000枚以上を売り上げ、日本においてショーロをしらしめる重要なアルバムとなった。この成功は翌年2002年リリースの『Cafe Brasil 2』にも繋がっている。
どちらもショーロの入り口として申し分のない、素晴らしいアルバムだ。

2017年にはエポカ・ジ・オウロの最後のオリジナルメンバーであったパンデイロの名手ジョルジーニョ・ド・パンデイロ(Jorginho do Pandeiro)が死去。
今作『De Pai Pra Filho』では、リズムの要であるそのパンデイロはセウジーニョ・シウヴァ(Celsinho Silva)が担っている。その他はアントニオ・ロッチャ (Antonio Rocha、フルート)、ジョアン・カマレロ (João Camarero、7弦ギター)、ジョルジ・フィーリョ(Jorge Filho、カヴァキーニョ)、ルイス・フラヴィオ・アウコフラ(Luiz Flavio Alcofra、ギター)、そしてロナウド・ド・バンドリン(Ronaldo do Bandolim、バンドリン)が主要メンバー。そして全員、めちゃくちゃ上手い。…まぁ55年も続く名門バンドともなると、その辺のオーディション(?)はとてつもなく狭き門なのだろう。

現在のエポカ・ジ・オウロ。

55年前から、ずっと変わらないもの。

エポカ・ジ・オウロの演奏の安定感は素晴らしい。もはや、ショーロといえばエポカ・ジ・オウロ、と言えるほど代名詞的な存在でもある。

彼らが演奏するのは、伝統に則った正統派のショーロだ。

目新しさは、何もない。

大抵のものは時代の変化に合わせて変わっていくし、音楽も例外ではない。
しかし、エポカ・ジ・オウロが55年間奏で続けてきたショーロはその形をまるで変えず、ピシンギーニャが生きた古きリオデジャネイロの粋を現代に蘇らせてくれる。

世の中には、変わらないものも必要なのだ。

オリジナル・メンバーが全員居なくなってしまったエポカ・ジ・オウロが、創立から55年目でリリースしたアルバムのタイトル『De Pai Pra Filho』は、“父から息子へ”という意味だ。

Epoca de Ouro - De Pai Pra Filho
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