神秘的な女性デュオ、Clara & Flaira による現代ブラジル音楽の真髄とも言うべき大傑作『Áua』

Clara & Flaira - Áua

“13の月の暦”に感化されたスピリチュアルなブラジル音楽

サンパウロ出身のクララ・コエーリョ(Clara Coelho)と、レシーフェ出身のフライラ・フェホ(Flaira Ferro)。自然を愛する二人の女性アーティストが出会い生み出した珠玉のデュオ・アルバム『Áua』。副題に「生まれ変わるための招待状」 と名付けられた本作は、感情面では非常に繊細ながら芯の強さを備え、音楽面ではジャズ、クラシックの室内楽、ブラジル北東部の土着音楽、フラメンコなどが自然に絡み合うという間違いなくハイクオリティな作品に仕上がっている。

二人の出会いは思わぬきっかけからだった。クララ・コエーリョが、自分の娘が歌うフライラ・フェホの曲「Faminta」(2019年のアルバム『Virada na Jiraya』の1曲目)をフライラ本人に送ったとき、二人は超越的なつながりを感じたのだという。二人は一緒に何かをしたいと考え、すぐにアルバムを制作するというアイディアに結びついた。作品はパンデミックのさなかの2020年から制作が開始され、2022年から1月に1曲ずつ、シングルがリリースされた。

根底にあるのはより自然に同化した生き方だ。
一般的に用いられるグレゴリオ暦ではなく、1ヶ月28日間を13ヶ月(=364日)と、芸術を通じて平和と文化を祝う、許しの日である7月25日を加えた「13の月の暦」という暦法に感化されている。月や太陽のエネルギーの周期、女性の周期など生命の原理に対しもっとも自然な暦法に基づき、最初のシングルである(1)「Cataclismas do Amor」は「13の月の暦」の新年にあたる2022年7月26日にリリースされた。さりげない変拍子すら自然で、生命の営みの美しさすら感じさせるアコースティック主体のこの楽曲は、二人の歌声もバックのアレンジも見事で、現代ブラジル音楽の真髄を印象付ける。

(1)「Cataclismas do Amor」

神秘的な響きを持つアルバム・タイトル「Áua(アウア)」は、幼児期のフライラ・フェホの「水(água)」の発音を採用した。彼女らは、水は生命に不可欠なものであり、宇宙と人間のつながりの中心でもあると考えている。「私たちの体内には70%の水分があり、意識は絶え間なく変化しています」とフライラは説明する。「私たちの地球は水に囲まれており、それが私たちに命を与えてくれます。あまりにも多くの破壊と、人間性の内側と外側の歪みの真っ只中に、再び生まれ変わる可能性を招き、歓迎したいという私たちの願いを込めたタイトルなのです」

(5)「Nossa Canção」(私たちの歌)にはアマゾンに住むブラジルの先住民族であるヤワナワ族(Yawanawás)による素晴らしいコーラスが収められている。この曲は地球上それぞれの存在が、それぞれの居住空間と声を持つ多様性を尊重する時代を祝う。政治も経済も環境も倫理も危機的な状況だが、人類はまだ地球と社会の再生のために自らの役割を果たすことができるという信念を歌う。

(5)「Nossa Canção」

(7)「Nascer Outra Vez」にはリオデジャネイロ出身の歌手/ダンサーのナターシャ・レレーナ(Natasha Llerena)がゲスト参加。2016年にデビューアルバムである名盤『Canto Sem Pressa』をリリースして以来、音楽家として音沙汰のなかった素晴らしい才能にこんなところで再会できたことに驚くが、アフロ・ブラジル音楽のエネルギーを保ちながらも洗練された楽曲の素晴らしさにも息を呑む。

アルバムに収録された9つの楽曲は、どれも驚くほどに素晴らしい。
魂が呼応する二人の女性の美しく繊細な感性によって生み出された、近年のブラジル音楽でも屈指のアルバムと言っても過言ではないだろう。

関連記事

Clara & Flaira - Áua
Follow Música Terra