スペインの現代ジャズ第一人者シャビ・トーレス、ロックダウンの中で書かれた創造性溢れる新譜

Xavi Torres - Quarantena Songs

スペインの現代ジャズをリードするピアニスト、シャビ・トーレス

スペインのピアニスト、シャビ・トーレス(Xavi Torres)は、パンデミックによるロックダウンの最中、創造性を保つために1ヶ月間、毎日1曲ずつ曲を書いた。“検疫の曲たち”を表す今作『Quarantena Songs』は、それらの30曲の中から14曲(サブスクでは12曲を聴くことができる)を選び、2つのトリオで演奏した作品だ。

シャビ・トーレスは隔離期間中の不安と恐怖に支配された生活の中で書かれたこれらの曲には、美しいエネルギーがあり、さまざまな感情が投影されていると語る。曲名にはおそらくは作曲された順番を表すであろう数字と、副題が添えられている。(1)「Qs 16 – Luz」は“光”という希望を感じさせる副題だが、その特徴的なメロディーや即興は混乱の影を引き摺っているように感じる。前半の6曲でトリオを組むのはキューバ出身のベーシスト、レイニエル・エリサルデ(Reinier Elizarde)とバルセロナ出身のドラマー、アンドレウ・ピタルク(Andreu Pitarch)。

(1)「Qs 16 – Luz」
(4)「Qs 20 – Upside Down」

後半(7)「Qs 29 – Empty Streets」以降の楽曲はトリオのメンバーを変え、ベースにオランダ出身クレメンス・ヴァン・デル・フィーン(Clemens van der Feen)、ドラムスには同じくオランダのジェイミー・ピート(Jamie Peet)を迎える。この曲を含む後半はアグレッシヴさが目立った前半より幾分叙情性を増しており、トリオのメンバーによるサウンドの違いが楽しめる。

Xavi Torres 略歴

ピアニスト/作曲家のシャビ・トーレスはスペイン北東部のカタルーニャ州タラゴナに1991年に生まれた。姉の影響でピアノを始めた彼は数年間クラシック・ピアノを学んだあと、ジャズの即興演奏に強い興味を持ちバルセロナのカタルーニャ高等音楽院(ESMUC)でジャズピアノを専攻、その後オランダ・アムステルダム音楽院でジャズ修士号とクラシック学士号を取得している。

2015年に初リーダー作『Skyline』をリリース。カタルーニャのジャズ協会から「2015年のベスト・ジャズ・グループ」として表彰されるなど高い評価を得た。
2022年作『Kind of Beethoven』はベートーヴェンのピアノソナタを、その構造をできる限り維持したままジャズアップした意欲作で、クラシックとジャズの垣根を感じさせない彼を象徴するような作品となっている。

Xavi Torres – piano
Reinier Elizarde “el Negrón” – double bass (1-6)
Andreu Pitarch – drums (1-6)
Clemens van der Feen – double bass (7-14)
Jamie Peet – drums (7-14)

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