エリーナ・ドゥニ、“時間”がテーマの新譜『A Time to Remember』
アルバニア出身の歌手エリーナ・ドゥニ(Elina Duni)、ロンドンのギタリストのロブ・ラフト(Rob Luft)、ピアノとドラムスを担当する同じくロンドンのフレッド・トーマス(Fred Thomas)、そしてスイス出身のフリューゲルホルン奏者マチュー・ミシェル(Matthieu Michel)の4人による新作『A Time to Remember』がリリースされた。移民が置かれた状況をテーマとしその音楽的豊かさから絶賛された前作『Lost Ships』と同じメンバーで、アルバニアの伝統音楽にインスパイアされたオリジナル曲を深い叙情を湛え描く。
アルバムにはエリーナ・ドゥニとロブ・ラフトの共作によるオリジナルのほか、(5)「E Vogël」、(8)「Mora Testinë」といったアルバニアやコソボの伝統曲、チャーリー・ヘイデンの名曲(7)「First Song」、米国のミュージカル発の(9)「Send in the Clowns」や(12)「I’ll Be Seeing You」といったスタンダードなど多岐にわたる。アルバム全体を一貫したテーマは“時間の経過”ということになるのだろうか。エリーナ・ドゥニ自身が経験してきた多様な音楽ジャンル、言語、文化的背景をさりげなく詰め込み、ジャズの中に自然と溶け込ませたサウンドは唯一無二といえる。
優れた音楽は言語を超え、時代を超える。
このアルバムはそれを証明するような素晴らしさだ。
Elina Duni プロフィール
エリーナ・ドゥニは1981年アルバニア生まれの歌手/作曲家。音楽を愛する家庭に生まれ、5歳のときに初めてステージで歌ったという。
1992年に同国の共産主義政権が崩壊後、母親とともにスイスのジュネーブに移住。ベルン芸術大学ジャズ科で歌唱、作曲、教育を学び、2004年以降はアルバニアの民族音楽にも強く影響を受けるようになり、バルカンの伝統音楽とジャズの融合を試みるようになる。自身のカルテットを結成した彼女はアルバニアへの音楽的オマージュを込めた『Matanë Malit』(2012年)でECMデビューを果たした。2014年にはコソボとアルバニアでシンガーソングライターとして初のアルバム『Muza e Zezë』をリリースしている。
ギタリストのロブ・ラフトは公私のパートナーで、現在はロンドンに拠点を移している。
Elina Duni – vocal
Rob Luft – guitar
Matthieu Michel – flugelhorn
Fred Thomas – piano, drums, percussion