独特の魅力を放つSFドリーム・ポップ。Salami Rose Joe Louis『Akousmatikous』

Salami Rose Joe Louis - Akousmatikous

Salami Rose Joe Louis『Akousmatikous』

アメリカ合衆国カリフォルニア州サンディエゴ出身の女性シンガーソングライター/プロデューサー、リンゼイ・オルセン(Lindsay Olsen)によるソロ・プロジェクト、サラミ・ローズ・ジョー・ルイス(Salami Rose Joe Louis)の新作『Akousmatikous』。無限のイマジネーションから解き放たれた光のようなものが四方八方に発散し、収束せぬまま空間を作り上げ、リスナーを幻惑し飲み込むような驚くべき世界観をもった作品だ。

どこか捉え所のないサウンドと、ウィスパー・ヴォイスは今作でも彼女を唯一無二の存在としている。これまで自身の作品で他のアーティストをゲストに迎えることを行なってこなかった彼女だが、今作では(1)「Akousmatikous」にコメット・イズ・カミング(The Comet Is Coming)の鍵盤奏者とドラマーのユニットであるサッカー96(Soccer96)が参加。宇宙SF的テーマを描いた『Zdenka 2080』の続編的な今作の物語の始まりを彼女らしく宣言している。
この曲名(英語で「acousmatic」)はフランスの音楽家ピエール・シェフェール(Pierre Schaeffer, 1910 – 1995)が提起したもので、聞こえるが目にはその音の発信源(楽器など)を特定することのできない純粋な音響音楽を指す言葉。ここでサラミ・ローズ・ジョー・ルイスによって表現されるカオスと調和の不思議なバランスは、この語句が持つ深淵な哲学をうまく内包しているように思える。

(1)「Akousmatikous」。MVはディズニー映画『ラーヤと龍の王国』を手がけたカルロス・ロペス・エストラーダ(Carlos López Estrada)が監督を務めている。

聴き進めるほどに奥が深く、惹かれてゆくばかりのアルバムだ。
Bandcampのディスクリプションによると、”懐中電灯とカシューナッツの缶を持ち、希望に満ちた楽観主義を持ち、キーボードを携えた架空の黙示録的な地球人のレンズを通して、多元宇宙と気候変動のアイデアを探求”するアルバムだというが、これほどこのアルバムを的確に捉えた表現はほかにないだろう。どこか捉えどころがなく、それでいて不思議と魅力ばかりを感じさせてくれる稀有な音楽は、録音からミキシングまで全てを彼女が愛用するワークステーション「Roland MV-8800」で行われたといい、独特な質感はそうした拘りからきたのかと感心させられる。

Salami Rose Joe Louis プロフィール

作曲家/マルチ奏者であるサラミ・ローズ・ジョー・ルイスは少女時代からパンクバンドで演奏していた。彼女は大学卒業後、ベイエリアの北にある小さな都市カリフォルニア州クロケットに移り、気候科学者として働きながら子ども時代のニックネームを掛け合わせたステージネームで音楽活動を行い、2016年にファーストアルバム『Son of a Sauce!』をリリース、翌年には2nd『Zlaty Sauce Nephew』をリリースした。

2枚目のアルバムのリリース直後、彼女は交通事故に遭ってしまい、しばらく仕事を休まざるを得なくなる。この間、彼女の曲のひとつがコマーシャルに採用され、さらにさまざまな出来事が重なり、フルタイムの音楽家になることを決意した。

サウスカロライナ州で活動するソロユニット、トロ・イ・モワ(Toro y Moi)の「Magazine」でのコラボレーションや現代ネオソウルの旗手ハイエイタス・カイヨーテ(Hiatus Kaiyote)の「Chivalry Is Not Dead」との共演も話題となり、フライング・ロータス(Flying Lotus)が主宰するレーベル、ブレインフィーダー(Brainfeeder)と契約し、『Zdenka 2080』(2019年)と『Chapters of Zdenka』(2021年)をリリースした。

ライヴ演奏動画

Salami Rose Joe Louis - Akousmatikous
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