Sofia Rei & Jorge Roeder 初の完全デュオ『Coplas Escondidas』
アルゼンチン出身の歌手ソフィア・レイ(Sofia Rei)と、ペルー出身のベース奏者ホルへ・ローダー(Jorge Roeder)。20年におよぶ音楽的パートナーシップを築いてきた二人の、初のデュオ作『Coplas Escondidas』がリリースされた。コントラバス1本と歌というシンプルな編成で、南米音楽への愛情溢れるたおやかな音楽を創り上げている。
(1)「Callejón De Un Solo Caño」はペルーの伝説的歌手エバ・アイジョン(Eva Ayllón)が歌ったことで知られる曲。原曲の軽やかなアフロ・ラテンをホルヘの卓越したダブルベース演奏に乗せてソフィアが伸びやかに歌っており、冒頭から素晴らしいアルバムであることを確信させる。
テクニカルなベースラインのイントロが印象的な(2)「Días De Sitio」はホルヘ・ローダーのオリジナル。
アルゼンチンのSSWホルヘ・ファンデルモーレ(Jorge Fandermole)の(4)「Oración Del Remanso」はしっとりとした曲調だが、二人の細やかなテクニックと表現力を堪能できる楽曲となっている。
(5)「Prestados」はソフィア・レイのオリジナルだが、素朴で哀愁を感じさせるアルゼンチン・タンゴのスタンダードかと思わせる素晴らしさ。
ブラジル音楽ファンとしてはピシンギーニャ(Pixinguinha)の名曲(10)「Rosa」の美しさも聴き逃せないところ。
長い年月の中で断続的に協力し、互いの音楽を磨き合ってきた二人の温かな“語らい”が聴こえる。ジャズでもラテン音楽でもなく、ソフィア・レイとホルヘ・ローダーという二つの魂が共鳴し合って生み出された、豊かな心の風景を描く素敵なアルバムだ。
ソフィア・レイ&ホルヘ・ローダー 略歴
アルゼンチン・ブエノスアイレス生まれのソフィア・レイ(Sofia Rei)は土木技師の父と哲学者/教授の母の間に生まれ、幼少期から地元の合唱団などで歌い、9歳でコロン劇場児童合唱団のメンバーとしてプロとしてのキャリアをスタートし、後に国立セルバンテス劇場のアルゼンチン国立児童合唱団に入団した。高校のときにパンクロックに出会い、バンドでドラマーとして活動し一時はステージで歌うことをやめたが、大学では国立音楽院のクラシックの声楽専攻として正式な音楽教育に戻っている。
19歳のときに初めてジャズに触れ、ヴォーカルの即興演奏について学び始め、若い作曲家たちと頻繁に共演するなど即興音楽とジャズにどっぷりと浸かり、米国に渡ることを決意。2001年にマサチューセッツ州ボストンのニューイングランド音楽院でジャズと即興演奏を学び、ここでホルヘ・ローダーと出会い以降20年間にわたって彼女の重要な音楽活動のパートナーとなった。
2005年にニューヨークに移り、マリア・シュナイダー(Maria Schneider)のジャズ・オーケストラに参加。2006年には自身のデビューアルバム『Ojalá』をリリースした。
一方のベーシスト、ホルヘ・ローダー(Jorge Roeder)は1980年ペルー・リマ生まれ。14歳でチェロとエレクトリック・ベースのレッスンを受け始め。16歳のときにチェロを学ぶために数ヶ月間ロシアに渡っている。帰国後、18歳からコントラバスを始め、2001年にリマ・フィルハーモニー管弦楽団とオペラ・オーケストラの副首席ベーシストに任命された。同年、リマのオルタナティヴ・メタル・バンド「Ni Voz ni Voto」のベーシストとしてアルバムデビュー。その後ジャズに専念するためにバンドを脱退した彼は2002年にニューイングランド音楽院に入学、卒業後しばらくしてニューヨークに移りギタリストのジュリアン・ラージ(Julian Lage)やピアニストのシャイ・マエストロ(Shai Maestro)ら最前線のミュージシャンと共演し、活発なシーンの中で一気にその名を馳せていった。
2007年に国際ベーシスト協会ジャズ・コンペティションで優勝。2009年セロニアス・モンク・ジャズ・コンペティションで準決勝に進出。
2020年には初のソロ・ベース作『El Suelo Mío』をリリースしている。
Sofia Rei – vocal
Jorge Roeder – double bass