アンブローズ・アキンムシーレ、憧れのビル・フリゼール/ハーレン・ライリーとの静かで鋭いトリオ作『Owl Song』

Ambrose Akinmusire - Owl Song

アンブローズ・アキンムシーレが巨匠二人を招きトリオで録音した新作

米国を代表するトランペッター、アンブローズ・アキンムシーレ(Ambrose Akinmusire)は新作『Owl Song』で彼が敬愛する二人のミュージシャンを招いた。ギタリストのビル・フリゼール(Bill Frisell)とドラマーのハーレン・ライリー(Herlin Riley)だ。アンブローズとは20も30も歳の離れたベテランとのセッションは、マイルス・デイヴィスと同じように“少ないほど良い(less is more)”という信念をもつ彼の音楽観を体現している。

現代人が追われる情報の波を避け、森のフクロウのように夜の帷の中で静かにその時を待つような、鋭い緊張感を持った演奏が印象的だ。アンビエントと呼ぶには切迫しているし、かといって攻撃的で心拍数を上げるようなものとは程遠い。聴けば聴くほどに3人が奏でる音は不思議に、夢想的に空間を漂う。

(1)「Owl Song 1」

アンブローズ・アキンムシーレは10代の頃、トランペットを手に取り、ビル・フリゼールのレコードに合わせて演奏を楽しんでいたという。「初めてビル・フリゼールと演奏した時から、彼と一緒にレコーディングをしたいという気持ちを持っていた」と彼は語る。「ビルの特別な才能のひとつは、初めて聴いた曲を形にする能力だ。彼は最初の音を出す前に、音楽が何を求めているのかわかっているかのようだ」ビル・フリゼールのユニークなスタイルもまた、“less is more”を最高のレベルで体現したものであることは間違いない。

(6)「Mr. Frisell」はそのタイトルのとおりアンブローズがビル・フリゼールに捧げた曲で、二人のデュオによって奏でられている。

(6)「Mr. Frisell」

今作はアンブローズのノンサッチ・レコード(Nonesuch Records)移籍後の第一弾となる。ノンサッチからは3枚のアルバムをリリースする予定とのことだ。

アンブローズ・アキンムシーレ 略歴

アンブローズ・アキンムシーレ(Ambrose Akinmusire)はナイジェリア出身の父親とミシシッピ州出身の母親のもと1982年に生まれ、カルフォルニア州オークランドで育った。高校のジャズアンサンブルで演奏していた時に、ワークショップを行うために同校を訪れていたサックス奏者スティーヴ・コールマン(Steve Coleman)の目に留まり彼のバンド、ファイヴ・エレメンツ(Five Elements)のメンバーとしてヨーロッパツアーに抜擢された。

ファイヴ・エレメンツに在籍しつつ、高校卒業後はマンハッタン音楽学校に進学。その後はカリフォルニア大学の修士課程に進学し非営利ジャズ教育機関セロニアス・モンク・インスティテュート(現ハービー・ハンコック・インスティテュート)に入り、ハービー・ハンコック(Herbie Hancock)、ウェイン・ショーター(Wayne Shorter)、テレンス・ブランチャード(Terence Blanchard)といった巨匠たちに師事してきた。

2007年にはセロニアス・モンク・インターナショナル・ジャズ・コンペティションとカーマイン・カルーソー・インターナショナル・ジャズ・トランペット・ソロコンペティションの両方で優勝。翌年にデビューアルバム『Prelude: to Cora』をリリースした。2011年には名門ブルーノート・レコードから『When the Heart Emerges Glistening』をリリースし、一躍スターダムにのし上がった。

Ambrose Akinmusire – trumpet
Bill Frisell – guitar
Herlin Riley – drums

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