ノルウェーのアンドレアス・ロイサム・アンサンブルの新作『Mysterier』
クラリネット奏者アンドレアス・ロイサム(Andreas Røysum)が率いるノルウェーの総勢12名の若い器楽奏者によるフリージャズ・バンド、アンドレアス・ロイサム・アンサンブル(Andreas Røysum Ensemble)が3枚目となるアルバム『Mysterier』をリリース。2人のドラマー、2人のベーシスト、木管4、金管2、そしてフィドルとチェロという編成で、統制とカオスを流動的に行き来する演奏はリスナーを興奮の渦に飲み込む。
音楽性も北欧のトラディショナル・フォーク色の濃いものから中東音楽、アフリカ音楽まで幅広く魅力的だ。バンドのデビューアルバム『Andreas Røysum Ensemble』(2020年)にはタブラ奏者もいたほど、オープンで貪欲な音楽性は彼らの精神性のコアだ。今作もインストがメインだが、(1)「Øyvinds Odyssé」後半のポエトリー・リーディングや、ソフィー・トレフスボル(Sofie Tollefsbøl)による素朴なヴォーカルがノスタルジーを喚起する伝統曲のカヴァー(3)「Hares on the Mountain」、(7)「Barbry Allen」によって素晴らしいアクセントが加えられている。
譜面通りの演奏ではなく、即興という、あからさまに個性が表出する演奏表現はジャズの最大の醍醐味だ。即興でのフレーズや音色、音の強弱、間の取り方などから奏者の感情に移入するのはジャズファンにとっての楽しみのひとつだろう。今作は、大人数が協調した迫力あるアンサンブルの瞬間もあれば、複数のソリストが同時に好き勝手に即興を楽しむ聴き応え抜群の瞬間もある(こういう音源は、採譜が趣味の方にはとってはたまらない)。
Andreas Røysum Ensemble
Andreas Røysum Ensemble はノルウェーのフリージャズバンド。結成当初よりアジアやアフリカの伝統音楽への強い関心が根底にあり、そういった要素とフリージャズ、現代西洋音楽を融合した解釈を特徴とする。少しずつ編成を変えながら、2020年にデビュー作『Andreas Røysum Ensemble』を、そして2021年にセカンドアルバム『Fredsfanatisme』をリリースしている。
Sofie Tollefsbøl – vocals
Henriette Eilertsen – flute
Signe Emmeluth – alto saxophone, flute
Marthe Lea – tenor saxophone
Andreas Røysum – B♭ clarinet, bass clarinet, flute
Erik Kimestad Pedersen – trumpet
Øyvind Brække – trombone, poetry
Hans P. Kjorstad – fiddle
Joel Ring – cello
John Andrew Wilhite – double bass
Christian Meaas Svendsen – double bass, electric bass
Andreas Wildhagen – drums, percussion, tubular bells
Ivar Myrset Asheim – drums, percussion, vibraphone