Las Migas、20周年を迎える年の6thアルバム『Rumberas』
バンド結成から20周年となるスペイン・カタルーニャの女性のみで構成されるフラメンコ・クロスオーヴァー・バンド、ラス・ミガス(Las Migas)の6枚目となるアルバム『Rumberas』がリリースされた。タイトルのとおりルンバ・フラメンカを基調としつつも、その伝統に捉われずに自分たちのスタイルを確立した彼女らの新作は自身と誇りに溢れており、長らく男性優位のジャンルとなっていたフラメンコが完全に新しい時代に入ったことを感じさせる。
アルバムのコンセプトは創成期からバンドの中心であり続けるギタリスト/作曲家のマルタ・ロブレス(Marta Robles)の次の言葉に凝縮されている。
私たちはルンベラスであり、フラメンコであり、
Marta Robles, Las Migas
自由であり、戦士であり、
私たちがなりたいものすべてです。
Somos Rumberas, somos Flamencas,
somos Libres, somos Guerreras
y somos todo lo que nos dé la gana ser.
独特のスケールやハーモニー感覚、ラスゲアードなど特徴的な奏法をもつ鋭いフラメンコギターのサウンドを中心にしているが、メンバー全員がコーラスで参加したり、ラップも取り入れるなどこのサウンドはLas Migasでしか成し得ないもの。ローラ・パシオス(Laura Pacios)が奏でるヴァイオリンも情緒豊かで、アルバム全編、とにかく華がある。
(3)「Buen rollo」は新型コロナ禍で結成された人気グループ、ステイ・オマス(Stay Homas)をフィーチュア。「あなたについて思っていることを話すよ/だからあなたも、私について思っていることを話して」という歌詞で始まる下世話なポップソングだが、この明るいノリも彼女らの魅力だ。
ラストの(10)「Zapateado de Marta」のみ、マルタ・ロブレスの卓越したギターをフィーチュアしたインストゥルメンタル。タイトルのサパテアードとはフラメンコを代表するリズムの一種。フラメンコ特有の複雑なリズムと旋律で、この美しいアルバムを締めくくる。
スペインを代表するフラメンコ・ミクスチャー・ユニット
Las Migasは2004年にカタルーニャ高等音楽学校の女学生4人で結成されたバンド。現在創立時のオリジナルメンバーはギターのマルタ・ロブレス(Marta Robles)のみで、他のパートはメンバー交代を繰り返しているが、ヴォーカリスト、ギタリスト2人、ヴァイオリニストの全員が女性という基本構成はずっと変わらないままだ。
活動初期からユース・インスティテュート(INJUVE )によって最優秀フラメンコ・グループ賞を受賞するなど、女性らしい華やかさとポップな感覚、そして歌や演奏のクオリティの高さで国際的な評価を確立。2022年には、アルバム『Libres』でラテングラミー賞「最優秀フラメンコアルバム賞」を受賞している。
オリジナル・メンバーであったシルビア・ペレス・クルス(Sílvia Pérez Cruz)は2011年までバンドのヴォーカルを担い、その後はソロとして国際的な成功を収めている。Las Migasのデビューアルバムである2010年作『Reinas del Matute』はシルビア・ペレス・クルスが全編ヴォーカルを務めた唯一の作品で、彼女のルーツを探る上でも重要な位置付けとなっている。
Las Migas :
Marta Robles – guitar, chorus
Alicia Grillo – guitar, chorus
Laura Pacios – violin, chorus
Carolina Fernández, La Chispa – vocal
Guests :
Guillem Boltó (Stay Homas) – vocal, trombone (3)
Klaus Stroink (Stay Homas) – vocal (3)
Rai Benet (Stay Homas) – vocal (3)
Suu – vocal (5)
Elena Gadel – vocal (8)