マチュー・フィゼ、プログレもラテンジャズも消化する鬼才ピアニスト 極上にエモい渾身の新作

Mathieu Fiset - Des Marteaux & Des Cordes

カナダ・ケベックの鬼才鍵盤奏者マチュー・フィゼ新作

カナダ・ケベックシティを拠点とする鍵盤奏者/作曲家マチュー・フィゼ(Mathieu Fiset)の新譜『Des Marteaux & Des Cordes』。通常版のEPと、そこに2曲を加えたデラックス版がデジタル・リリースされているが、今回は8曲収録のデラックス版の方を紹介したい。

一言でいうと、ラテン・ジャズやフュージョン、プログレッシヴ・ロックといった要素が高度に融合した、鳥肌の立つようなかっこいい音楽だ。録音には過去作にも参加する世界的ドラマー、ラーネル・ルイス(Larnell Lewis)やアコースティック・ギターのアントワン・デュホール(Antoine Dufour)、ヴァイオリン/マンドリンのトミー・ゴティエ(Tommy Gauthier)といった凄腕たちが揃っており、各々の細かいプレイの隅々まで最高に楽しいセッションが繰り広げられる。

(2)「Miaou」。スナーキー・パピーでの活躍で知られるラーネル・ルイスが叩き出すグルーヴに乗せたタイトなアンサンブル。

アルバム収録の楽曲は作編曲も演奏も、いずれも異次元のレベルの高さに驚かされる。
ヴァイオリンとピアノによる叙情的なイントロから郷愁を誘うラテン風のグルーヴに雪崩れ込む(3)「Rédemption」、スウェーデンの鍵盤奏者イェンス・ヨハンソン(Jens Johansson, イングヴェイ・マルムスティーンのバンドの初期メンバー)がゲスト参加しシンセを引き倒す(5)「Détour」、叙情的かつ情熱的、いわゆる“エモさ”の極みの(6)「Trilogie」など、いつまでも聴いていたくなるような音ばかりだ。

(4)「Indécision」

アルバムのラスト2曲はマチュー・フィゼによるソロピアノ。これはこれでとても素晴らしい曲と演奏だが、バンド編成での演奏も聴いてみたくなるような楽曲だ。

Mathieu Fiset 略歴

マチュー・フィゼは1989年カナダ・ケベックシティ生まれ。幼少期から音楽に触れて育ち、クラシックピアノを学んだ。10代の頃、いくつかの地元のバンドに参加し、オリジナルの楽曲を書いて演奏活動や録音を開始。カナダで数枚のアルバム・リリースとツアーを行った後、さらに活動の幅を広げ7年間にわたり中国、アラブ首長国連邦、東南アジアなど広範囲のツアーを行った。

2012年作『Robojazz』に収録されている曲「Chick’s Pain」はYouTubeを通してラーネル・ルイスのドラミングも含め話題となり、マチュー・フィゼの最初の大ヒットとなった。

アコースティック編成のジャズバンドや、前述のRoboJazzと呼ばれるシンセやエレクトリック楽器を多用したプログレ/フュージョン寄りの編成など幅広い領域を得意としており、これまでのアルバムはいずれも非常にクオリティが高い。

Mathieu Fiset – piano
Antoine Dufour – acoustic guitar
Tommy Gauthier – violin, mandolin
Larnell Lewis – drums
Charly Yapo – electric bass
Dayron Luis San Muguercia – congas, percussions (2, 3, 4)
Marie-Josée Morissette – violin (3)
Jens Johansson – synth (5)

Mathieu Fiset - Des Marteaux & Des Cordes
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