本能を踊らせるクラリネットとアコーディオンのデュオ、再び。至福の地中海ジャズ

Gabriele Mirabassi & Simone Zanchini - Un Ballo Con La Luna

ガブリエーレ・ミラバッシ&シモーネ・ザンキーニのデュオ、再び

クラリネット奏者ガブリエーレ・ミラバッシ(Gabriele Mirabassi)と、アコーディオン奏者シモーネ・ザンキーニ(Simone Zanchini)のデュオ第二弾となるアルバム『Un Ballo Con La Luna』がリリースされた。二人の初デュオ作である前作『Il Gatto E La Volpe』(2022年)はオリジナルが中心だったが、今作は逆にカヴァー曲を軸に、燦々とした地中海ジャズを聴かせてくれる絶品だ。

アルバムのタイトルはイタリア語で”月とのダンス”の意味。イタリアの作曲家セルジオ・モンダドリ(Sergio Mondadori)による情熱的なワルツ(1)「Rebello」から、南米音楽である(3)「Carioca」や(7)「Besame Mucho」、(8)「Segura ele」などバラエティ豊かな楽曲を熟練の技術で魅せる。楽曲の共通点はタイトルのとおりダンス音楽であること。これは人々が古来より楽しんできた踊りのための音楽であり、人間に本能的に備わるダンスの感性を静かにくすぐる。

(1)「Rebello」

それにしても、この二人は身体が音楽そのものでできているのではないだろうか、と思うほど楽器と一体化している。内から沸き出るすべての感情が、クラリネットとアコーディオンというそれぞれの楽器に完全にシンクロし驚くほどの巧みさで表出している。

シモーネ・ザンキーニは鍵盤式アコーディオンを演奏。古典的だが音楽の真髄とも思える美しい和音とベースライン、そしてメロディーを奏で、強弱を完璧にコントロールする。(4)「La Puerta」などではエフェクトも効果的に用い、人々が気持ちよく踊れる空間を作り出す。

ガブリエーレ・ミラバッシのクラリネットは、いつものように魔術的だ。
”踊るクラリネット奏者”はザンキーニのアコーディオンに乗せてますます躍動し、人々に率先して最高に激しく、自由に踊っている。
ミラバッシがソロで演奏する(7)「Besame Mucho」はクラリネット独奏の史上最高峰だろう。

(2)「L’accordeon Magique」

Gabriele Mirabassi 略歴

クラリネットのガブリエーレ・ミラバッシは1967年イタリア・ペルージャ生まれ。チェンバー・ジャズの第一人者としてこれまでに数多くのアルバムを発表しており、エンリコ・ピエラヌンツィ(Enrico Pieranunzi)、マーク・ジョンソン(Marc Johnson)、スティーヴ・スワロウ(Steve Swallow)、ジョン・テイラー(John Taylor)といった国内外の著名アーティストとの共演も多数。イタリアを代表するジャズレーベル、EGEAの看板アーティストとして知られている。

ブラジル音楽にも強く傾倒し、これまでにギタリスト/作曲家のギンガ(Guinga)や、ピアニスト/作曲家のアンドレ・メマーリ(André Mehmari)、ギタリストのセルジオ・アサド(Sérgio Assad)といったブラジルを代表する音楽家たちとアルバムを制作してきた。
人気ピアニストのジョヴァンニ・ミラバッシ(Giovanni Mirabassi)は実弟。

Simone Zanchini 略歴

アコーディオンのシモーネ・ザンキーニは1973年イタリア・ノヴァフェルトリア生まれ。クラシック出身ながら革新的なアコーディオン奏者として知られ、ライブ・エレクトロニクスなども多用する。

これまでにトーマス・クラウセン(Thomas Clausen)、ジャンルイージ・トロヴェシ(Gianluigi Trovesi)、パオロ・フレス(Paolo Fresu)、ハビエル・ジロット(Javier Girotto)、ジョン・パティトゥッチ(John Patitucci)らと共演し、国内外の様々なジャズ・フェスティヴァルに出演。1995年以来、20枚のアルバムを録音している。

Gabriele Mirabassi – clarinet
Simone Zanchini – accordion

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