ロンドンのジャズシーンで輝くシンガー、テス・ハースト 待望の新譜『HERstory』

Tess Hirst - HERstory

テス・ハースト新譜『HERstory』

2019年のデビューアルバム『These Days』が非常にクオリティ高く印象的だったロンドンのヴォーカリスト、テス・ハースト(Tess Hirst)の新作『HERstory』。今作は一応彼女のソロ名義であるものの、前作の共同名義人であるベーシストのダニエル・カシミール(Daniel Casimir)が作曲/演奏/プロデューサーとして参加しており、前作の正当な続編といえる。

他のバンドメンバーは総入れ替え。ピアノに現代のロンドンのジャズシーンを代表する女性ピアニストのサラ・タンディ(Sarah Tandy)、そしてドラムスにはホセ・ジェイムズやフライング・ロータスとの共演などで知られ、現代的な解像度の高いドラミングを得意とするリチャード・スペイヴン(Richard Spaven)という布陣を敷き、さらには多数の有望な若手を輩出するロンドンの音楽教育NPO「Tomorrow’s Warriors」から派生した弦楽四重奏団であるTomorrow’s Warriors StringTing がクラシカルな彩りを添えるという、まさにロンドンらしい音に仕上がっている。

(1)「This Is Her」

個人的には白玉(全音符や二分音符)の多いサラ・タンディのピアノには物足りなさも感じてしまうが、リチャード・スペイヴンが人力ドラムンベースでその分頑張っている(?)ところを聴くにこれがアレンジャー/プロデューサーの意図なのかもしれない。

自らの名前にもかけたアルバムタイトルだが、今作のテーマはその名のとおり自らや周囲の女性たちの十人十色の物語への賛歌だ。最初のシングル(8)「Magic」は、どんな困難にも立ち向かう女性たちをリスペクトし、リスナーに自分自身の中に眠るマジカルな感覚を呼び起こすよう促している。(5)「A Seed」は予期せぬ状況を楽しみ、美しいものに変えようというポジティヴなメッセージを発している。

(8)「Magic」

Tess Hirst – vocals
Daniel Casimir – electric, upright bass, synth bass
Sarah Tandy – piano
Richard Spaven – drums

Tomorrow’s Warriors StringTing :
Rhiannon Dimond – violin
Matt Holborn – violin
Julia Dos Reis – viola
Miranda Lewis-Brown – cello

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