精神世界を解き放つ。ピアノとチェロによる清らかで静謐なデュオアルバム『Pauses in Shades』

Maya Belsitzman & Uriel Herman - Pauses in Shades

Maya Belsitzman & Uriel Herman 初の共演『Pauses in Shades』

チェリスト/歌手のマヤ・ベルシッツマン(Maya Belsitzman)と、ピアニストのウリエル・ヘルマン(Uriel Herman)はともにクラシック音楽を学んでいた20年以上前からの友人だったが、これまでにレコーディングを行ったことはなかった。COVID-19によるパンデミックは彼らに再会と初めての録音の機会を与え、二人は事前のリハーサルも楽譜も計画も何もないままにスタジオに入り、互いに深い精神的な対話を重ねることによって僅かなコンポージングを即興で彩った素晴らしい音楽『Pauses in Shades』を作りあげた。

10曲、約30分の魔法のような音楽が捉えられたアルバムは困難な状況に救いの手を差し伸べる祈りであり、一筋の光明のようなものだ。フレデリック・ショパンへと捧げられた(2)「Homage to Chopin」、空間的なエフェクトやヴォイスも効果的に取り入れた幻想的な音響空間がこの世のものとは思えないほど美しい(3)「On a Boat」、そしてウリエル・ヘルマンの内省的なジャズピアノを中心にマヤ・ベルシッツマンの多重録音されたピッツィカートによるベースラインや音響効果的なアルコが絡む(4)「First Step (Nur)」など、前半部だけでもこのセッションがいかに素晴らしい時間だったかが見て取れる。

(3)「On a Boat」

フリージャズに傾倒する(6)「Dance of the Blinds」で場面を転換しつつ、静謐な終盤へと舞台は様子を変えていく。チェロを中心とした(7)「Not Alone」、シンセサイザーの音色も効果的な(8)「Echo of Regrets」、クリシェだがピアノとチェロというフォーマットで最大限に即興音楽の美しさを追求する(9)「Sandbox」、そして薄くエコーのかかったピアノが特徴的な(10)「Shades」と、どの楽曲も奇跡的な清らかさを湛えている。

Uriel Herman プロフィール

ウリエル・ヘルマン(ヘブライ語:אוריאל הרמן)は1987年エルサレム生まれ。ジャズとクラシックの両方で活躍するピアニスト/作曲家。7歳からクラシックピアノを習い、作曲家のマイケル・ウォルプ (Michael Wolpe)、ピアニストのイレーナ・ヴェレッド(Ilana Vered)といった国際的な教師に師事、2010年にエルサレム音楽舞踊アカデミーを卒業している。

2014年作『Awake』リリース後に紅海ジャズ・フェスティヴァルへの出演や台中国立歌劇院での演奏など国際的に活躍の場を広げ、2019年作『Face to Face』はクラシックやロックからの影響も強く受けた独自色の強いジャズとして高く評価された。2023年にはロンドンのレーベル、Ubuntu Musicからリリースしたアルバム『Different Eyes』は、英国のガーディアン紙によって2023年のベスト・ジャズアルバム10に選出された。

Maya Belsitzman プロフィール

マヤ・ベルシッツマン(ヘブライ語:מאיה בלזיצמן)は1986年テルアビブ生まれのチェリスト/歌手/作曲家。7歳からチェロを弾き始め、テルアビブ芸術学校、テルマ・イェリン芸術高校で学んだ。徴兵されたIDF(イスラエル国防軍)では「傑出した音楽家」に選ばれ、部隊の弦楽四重奏団の一員となっている。

2010年頃より公私のパートナーであるドラマーのマタン・エフラット(Matan Ephrat)とのデュオを中心に活動をしており、フランス、メキシコ、アルゼンチン、ケニアなど世界中の音楽祭で演奏をしてきた。

Maya Belsitzman – cello, voice
Uriel Herman – piano, synthesizer

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