daisuke kazaoka初のワンマンライブ、作品の世界観を見事なまでに再現した「五感」で感じるサウンドクリエイティブ

今年5月に初のフルアルバム『サウンドスケープ』をリリースした、マルチアーティスト・daisuke kazaoka
それから約半年。
11月15日にdaisuke kazaokaの地元である愛知・名古屋のKDハポン、11月22日に東京・代官山の晴れたら空に豆まいてで行われた初のワンマンライブ。本稿では東京公演の様子をレポートする。

音源だけでは感じることの出来ない五感で感じるステージ

平日の19時を少し過ぎた時刻。
重い扉を開け、目に飛び込んできたのは作り込まれたステージだ。
左手には大きな木が置かれ、ステージを囲うように配置されたフワリとやさしい印象を与える薄手の布にはレトロクラシックなランプが温かな光を照らし出している。
事前にVJや舞台美術、お香などを入れたイマーシブなライブになると聞いていたこともあり、否が応でも期待は高まる。

静かにステージに現れたこの日の主役が最初に手にした楽器は鍵盤ハーモニカ。
『サウンドスケープ』の冒頭を飾るインスト曲である「はじまり」が演奏されると、空気は一変。上述した温かな光はまるで夕焼けのように印象を変え、まさにサウンドスケープ(音風景)が眼前に広がり始める。
ゆめ」「おもいで」と進む中、ステージ上で細かなミキシングを重ねながら音を調合していく様からは、daisuke kazaokaが自らの楽曲を非常に大事にし、丁寧に表現しているのがひしひしと伝わってくる。

「歌詞よりも先に曲」
「そこで生まれた情景を歌詞に」
「ここ数年はこのスタイルがしっくり来ている」

MCで語られた上記の言葉がまさにdaisuke kazaokaの、音やそこで見えた情景や楽曲の持つ世界観へのこだわりを示している。

MCを挟み、聞こえて来る波の音。
VJによるヴィジュアル演出の中、演奏される「島と口ぶえ」は、音楽ライブというよりある意味演劇的であり、それらは音源として聴くだけでは表現しきれない、楽曲の持つ世界観やメッセージを何倍にも増幅させていたように感じる。

また、daisuke kazaokaが紡ぎ出す言葉、歌詞も無視することは出来ない。
続く未発表曲「」ではこう綴られている。

“確かな答えなどない”
“時間さえあればいい”

多くを語らず、この余白を残す表現こそが、まさにdaisuke kazaokaの歌詞の持つ強さであり、この日集まった観客はきっとdaisuke kazaokaの音楽が持つ、この肯定感を求めて来ているのだろう。
五感で訴えかけるステージと、それを五感で受け取る観客。
まさに『サウンドスケープ』の世界に浸り、ステージと観客が一体になった瞬間が、この時ではないだろうか。

ニューミュージックからダンスホールまで。daisuke kazaokaを形作った音楽たち。

ここからライブは一転、テンポアップ。
星間飛行」でフロアを揺らすと、「やさしい空に」では途中にBob Marleyの「Waiting in Vain」を差し込む粋な演出。
楽器をアコースティックギターに持ち替えた後は、弾き語りによる「Southern Bound」、西岡恭蔵のカバー「ジャマイカ・ラブ」を2曲続けて披露。

中学生の頃からダンスホールレゲエをはじめ15年、ようやくたどり着いたワンマンライブへの想いと感謝を語った後、演奏されたのは「遅いミラーボール」だ。
まさに歌詞の情景と一致する、寒さ迫る11月のライブハウスで、曲がかかった瞬間に輝き出したミラーボールに思わずニヤリとさせられる。

勢いそのままに突入する「DeeJay Smoothly」は、ダンスホール・レゲエのレジェンドの名が多数登場する楽曲。巧みなDeeJayを披露するなど、レゲエ愛溢れるステージに会場の熱気は最高潮を迎える。

Bob Marleyに始まり、西岡恭蔵、そしてダンスホールレジェンドたちと、今のdaisuke kazaokaを形作る要素が詰まった楽曲が多数演奏された中盤。
MCで多くを語ることのなかったこの日のライブだが、曲構成を見ると、daisuke kazaokaが言葉ではなく音楽という形で自らを語り、コミュニケーションを取ろうとしてくれている姿勢が伺えた。
こういったアーティストとの物理的・心理的距離が近くなることも、やはりライブの醍醐味だ。

「水色の午後」そして「一日の終わり」

未発表曲の「夜明け」を経て、最後を締めくくるのは、本作のシングル曲でもある「水色の午後」。
ただ、これでは終わらないのは皆わかっている。
アンコールで呼び出されたdaisuke kazaokaが最後に演奏したのは、もちろん「一日の終わり」だ。

“長い旅の途中さ”
“この先にどこの誰と出会う”
“そしてこれから誰と別れる”

ワンマンライブという新たな一歩を踏み出したdaisuke kazaokaという素晴らしいアーティストの門出を祝うとともに、これから先どのような出会いと別れを繰り返し、新たな音楽を紡ぎ出すのか。
引き続き、楽しみにウォッチしていきたい。

また、ページ下部にこの日のセットリストをわかる範囲でプレイリストにしたので、是非この日の空気を少しでもお裾分け出来ると幸いである。

入り口付近に置かれた物販ブース。自身の念願であるLPの他、この日のために特別に調合されたお香も販売。

プロフィール

1994年、愛知県生まれ。シンガーソングライター、作曲家。 主にジャマイカ音楽に影響を受け、楽器の演奏、作詞、作曲、編曲、ミックス〜マスタリングまで自身で行いセルフプロデュースで制作。 ライブではギターやメロディカなどの楽器を演奏し、エフェクト処理を施しながら歌うパフォーマンスを行なっている。 自身で製作したトラックを使いその場でライブダブミックスを行うビートライブや、弾き語りでの演奏など様々なライブ形態で活動。 また、三重、京都、山形など日本各地の芸術祭等で舞台作品の音楽も多数手がけ、活動の範囲を広げており、 バンド・OVERFALLのメンバーとしても活動中。

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