洋の東西からアンダルシアに流れ着き、そこで混ざり合った音楽の現在地。メロン・ヒメネス『Confluencias』

Melon Jimenez - Confluencias

バンスリとフラメンコギターが奏でる、ロマの軌跡をめぐる音楽

デュオとしてのデビュー作『Rosa de los Vientos』(2022年)が話題となったギタリストのメロン・ヒメネス(Melón Jiménez)とバンスリ奏者ララ・ウォン(Lala Wong)の異色デュオによる新譜『Confluencias』がリリースされた。名義はメロン・ヒメネス単独だが、実質はララ・ウォンとの双頭作品で、今作ではエレクトロニックの要素もほどほどに加えた魅力的なエスニック・フラメンコが展開される。

エリック・サティのメロディーも引用した(6)「Kalima」

スペイン南部のアンダルシア地方で生まれたフラメンコ音楽は、北インドから放浪してきたロマ(ジプシー)の芸能とアラブ系民族やアンダルシアの伝統文化と融合して形作られたと言われているが、(1)「Confluencias」でのシンセによる低音のドローンが鳴り響くなか徐々に熱を帯びていくバンスリとギターの演奏など、本作で繰り広げられる独特の音楽はそうした地理的に遠く隔てられた地域の根源的なつながりに想いを巡らせるには充分すぎる。

演奏には即興も多く、ジャズからの影響も強く感じさせる。アルバムタイトルの「Confluencias」つまり“合流点”が象徴的に示すとおり、要の東西から流入してきた音楽がイベリア半島の最南端で融合したものがこの作品と言える。

(4)「Un nuevo amanecer」のライヴ演奏動画

プロフィール

メロン・ヒメネス(Melón Jiménez)は1986年にドイツで生まれた。スペイン出身の父親のミゲル(Miguel Jiménez)もギタリストで、その手ほどきを受けて幼少期からフラメンコギターを弾くようになり、またピアノを弾くドイツ系の母親によってモーツァルトやショパンといったクラシック音楽にも触れて育った。
14歳の頃にフラメンコ歌手ニーニャ・パストリ(Niña Pastori)のバンドに正式なギタリストとして加入し、世界中をツアーした。その後はアヌーシュカ・シャンカール(Anoushka Shankar)、ホルヘ・パルド(Jorge Pardo)、リチャード・ボナ(Richard Bona)といったミュージシャンたちと共演をし、2019年に自身のアルバム『El sonido de los colores』を発表した。

ララ・ウォン(Lala Wong)は中国出身の両親のもと、カナダで生まれ育った。モントリオールのマギル大学でクラシックとジャズ・フルートの学位を取得。在学中にフラメンコ音楽に熱中し、卒業と同時にスペインに渡りフラメンコ音楽を学び、以降はマドリードを拠点にインドの伝統的な横笛であるバンスリでフラメンコを演奏するという特長で人気となり、60年の歴史のあるカンテ・デ・ラス・ミナス・フェスティバルで最も優秀なフラメンコ楽器奏者に与えられるフィロン賞の最優秀賞を獲得した初の外国人となった。

Melón Jiménez – guitar
Lala Wong – bansuri, flute

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