ジャズ、カリビアン、ソウルなど多彩な”遺産”を音楽の軸とするフランスの素晴らしいバンド、Yusan

Yusan - Ba Yo

万華鏡のような魅力的なサウンド。フランスのバンド、Yusan

韓国語で“遺産”(유산)の意味を持つフランスのバンド、ユサン(Yusan)の2024年新譜『Ba Yo』が素晴らしい。現代ジャズ、ネオソウル、アフロ・カリビアン、ゴスペルなど様々な要素が溶け込んだ技巧的かつ斬新な音楽性で、今作ではさまざまなリズム、声を組み合わせた万華鏡のような音楽観で強いインパクトを与える。

ユサン(Yusan)は様々な音楽的背景を持つ5人の音楽家の出会いにより、2017年に結成された。サックス奏者のロマン・クオック(Romain Cuoq)はフランスのジャズ/ヒップホップのシーンで活躍。鍵盤奏者のケヴィン・ジュベール(Kevin Jubert)はゴスペル・コミュニティ出身で、伝説的なグループ「Gospel pour 100 Voix」の音楽監督を長年務めている。グウェン・ラドゥ(Gwen Ladeux)はフランスのヒップホップとソウル・シーンで最も人気のあるベーシストの一人で、マチュー・エドゥアール(Mathieu Edouard)はアーバン・ポップのビッグネームとも共演する多才なドラマー。そしてマルティニーク出身のギタリスト、ラルフ・ラヴィタル(Ralph Lavital)はこれまでにマイラ・アンドラーデ(Mayra Andrade)やソニー・トルーペ(Sonny Troupé)といった著名な音楽家と共演する実力者だ。

“遺産”というグループ名が、文化的な多様性を前面に据える彼らのスタイルを象徴している。ゲスト歌手シプリアン・ゼニ(Cyprien Zeni)をフィーチュアした強烈なポリリズムの(1)「Yaly」は今作のベスト・トラックのひとつで、アフリカや西インド諸島の音楽的遺産と、ジャズ/フュージョンを融合したアイディアの斬新さに驚かされる。

(1)「Yaly」のライヴ動画

(2)「Yessay」はアクセント的にスキャットが入るものの、ほぼインスト。音楽性の高さを証明する6分間は至福以外の何者でもない。

(4)「Esoka Longuē」はシンガーのアン・シャーリー(Ann Shirley)をフィーチュアしたクレオール・ジャズ。サウンドはコーラス含め細部まで作り込まれており、簡単に聴き流せるようなものではない。

アン・シャーリーをフィーチュアした(4)「Esoka Longuē」

(5)「Mawonnen san viza」はマルティニークの女性歌手ジョセリン・ベロアール(Jocelyne Beroard)をフィーチュア。少しばかりの望郷を感じさせる曲調が魅力的だ。

(5)「Mawonnen san viza」のMV。どうですか、この絶妙にチープで最高なクリエイティヴ…

アルバムには他にレユニオン出身のハーモニカ奏者オリヴィエ・ケル・オゥリオ(Olivier Ker Ourio)、パリのシンガー、ダニ・ブンバ(Dani Bumba)、グアドループ出身のジャン=ミシェル・ロタン(Jean-Michel Rotin)といった面々がゲスト参加。アルバムに豊かな彩りを加えている。

パーカッション/歌手のナターシャ・ロジャースをゲストに迎えた(13)「Los Santos」

39秒間のインタールード(12)「Vocal Mathieu (interlude)」 は鬼才シャソール(Chassol)のプロデュース。

Yusan :
Ralph Lavital – guitar
Romain Cuoq – saxophone
Kevin Jubert – keyboards
Gwen Ladeux – bass
Mathieu Edouard – drums

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