消化不良上等な究極的プログレ&カオス! ガムラン×サイケロックの衝撃、ペニ・チャンドラ・リニ新譜

Peni Candra Rini - Wani

サイケ&カオス、ときどきポップ。Peni Candra Rini 新作『Wani』

インドネシアのシンガー・ソングライター、ペニ・チャンドラ・リニ(Peni Candra Rini)の新譜『Wani』は、おそらく多くの人にとって今まで聴いたどんな音楽よりも新鮮なリスニング体験をもたらしてくれるだろう。ギターやベース、ドラムスといった軸となる楽器編成は間違いなく西洋のロックに影響を受けているが、西洋音楽の理論では説明が不可能なガムランの音階、曲中で自在に伸縮するリズムが一見カオスなようでいて、聴けば聴くほど神秘的な美しさを秘めた宝石の原石ような魅惑的な輝きを放つ。

アルバムはどういうわけか日本の童謡「浦島太郎」の日本語の独唱で幕を開くが、その後の展開はプログレッシヴでサイケデリックかつカオスティックだ。猛るドラムス、毛羽立つギター、軽やかに舞うフルートが絶妙で、楽曲は目まぐるしく展開するがところどころ妙にポップになったりする。

(1)「Urashima Taro」

アルバムが内包するのは”伝統的なジャワの芸術、経典、政治、影絵、そして歌唱”だという。プロデューサーはディアフーフ(Deerhoof)やメアリー・ハルヴォーソン(Mary Halvorson)らを手がけたジョン・ディートリック(John Dieterich)で、彼がペニ・チャンドラ・リニに自由に音楽を作らせた結果、このような形になったようだ。

彼女の前作『Wulansih』もなんだか凄い作品だったが、今作はそれを上回っていると感じる。正直、めちゃくちゃ衝撃的なアルバムだ。

Peni Candra Rini 略歴

ペニ・チャンドラ・リニは1983年生まれの歌手/作曲家。インドネシアで最も大胆な若手作曲家の一人とされており、イスラム教徒が多数を占めるこの国では数少ない女性作曲家の一人。米国の劇作家ロバート・ウィルソン(Robert Wilson)がスラウェシ島南西に居住するブギス族に伝わる壮大な創世神話をもとに制作した音楽劇『I La Galigo』のフィーチャリング・シンガーとしてワールドツアーを数回行うなど、国際的に幅広く演奏してきた。

2022年にはアガ・カーン財団の芸術賞受賞者に選出。 2023年、彼女は中部ジャワのマンクヌガラン宮廷のために作品を作曲するよう依頼された初の女性となり、2024年にはインドネシア国王から与えられる最高の栄誉であるラデン・ガンテン・トゥメングン宮廷名を授けられた。2024年には、クロノス・カルテット(Kronos Quartet)とカーネギー・ホールから依頼された弦楽四重奏のための組曲『Segara Gunung』を完成させた。

Peni Candra Rini – voice
Satomi Matsuzaki – voice
Jessica Zike – voice
Andy McGraw – drums, pin-pia, percussion, cak, cuk, celeste, gamelan, harpsichord
Hannah Standiford – cak
Clover Dosier – cuk
Robert Andrew Scott – fiddle
Brian Larson – percussion
Nat Quick – guitar, ukulele
Gary Kalar – guitar
Curt Sydnor – keyboards
Brandon Simmons – flute
John Priestley – bass, gongs
Joanne Kong – harpsichord
Putu Hiranmayena – gamelan
I Gusti Putu Sudarta – voice
Taylor Burton – gamelan
Nicholas Merillat – gamelan
Justin Alexander – drums
Scott Clark – drums

関連記事

Peni Candra Rini - Wani
Follow Música Terra