ニコラス・イバルブル新作『La Ruta de la Seda』
ウルグアイのSSW/ギタリスト、ニコラス・イバルブル(Nicolas Ibarburu)の2025年新譜『La Ruta de la Seda』は、音楽家としての彼の圧倒的な才能を感じさせる素晴らしい傑作だ。ジャズやフュージョン、ロックにウルグアイの伝統的なカンドンベを巧みに組み込んだ最高のラテンロック。“シルクロード”を意味するアルバム・タイトルどおり、異なる文化を繋ぎ、混ぜ合わせた個性的な音楽でリスナーを潜在意識の巡礼の旅へと誘う。
曲ごとにフィーチュアされた多彩なゲストも魅力的だ。(1)「La Ruta de la Seda」ではキューバ生まれでウルグアイで活動する女性歌手エイリーン・サンチェス(Eileen Sánchez)が美しいコーラスを聴かせてくれる。曲はフュージョン、ジャズロックの流れを汲みつつ、ラテン気質で塗した今作のリード曲。
ウルグアイの伝統音楽であるカンドンベ1に由来する強力なリズムとグルーヴは、今作の最重要要素だ。(2)「Dulce Herida」や(9)「Fuegos」は特にその特徴が強く、モンテビデオの誇り高き伝統文化の一端を伝える。
カンドンベ・ロック(2)「Dulce Herida」はヴォーカル/コーラスにアルゼンチンの女性歌手シルビナ・ゴメス(Silvina Gómez)をフィーチュア。武骨なニコラス・イバルブルの声と重いグルーヴとのちょうど良いバランサーとして機能している。
ウルグアイの巨星ルベン・ラダの娘、フリエッタ・ラダ(Julieta Rada)が(7)「Brújula」に参加。
(8)「A la misma Vez」にはアルゼンチンを代表するSSW、セバスティアン・マッキ(Sebastián Macchi)が参加し柔らかい歌声を披露する。
Nicolas Ibarburu 略歴
ニコラス・イバルブルは1975年にラプラタ川の河口左岸に位置するウルグアイの首都モンテビデオに生まれた。兄でベーシスト/チェリストのアンドレス(Andrés Ibarburu)、双子の兄弟でドラマーのマルティン(Martín Ibarburu)とともにバンド活動を行い、ソロとしてはルベン・ラダ(Ruben Rada)やウーゴ・ファットルーソ(Hugo Fattoruso)といったウルグアイのレジェンドたちや、隣国アルゼンチンのフィト・パエス(Fito Paez)、ダンテ・スピネッタ(Dante Spinetta)、キケ・シネシ(Quique Sinesi)といったビッグネームと共演を重ねてきている。
- カンドンベ(candombe)…ウルグアイのパーカッションを中心とした伝統的な音楽様式。径の小さい順にチコ(chico)、レピーケ(repique)、ピアノ(piano)という3種の大きさの異なる太鼓(タンボール, tambor)を中心として小〜大規模な集団で演奏される。2009年に「カンドンベとその社会・文化的空間」がユネスコ無形文化遺産に登録された。 ↩︎
Nicolás Ibarburu – vocal, electric guitar, acoustic guitar, guitarrón, percussion
Martín Ibarburu – drums
Fernando “Pomo” Vera – bass
Manuel Contrera – keyboards
Juampi Dileone – flute, quena, chorus (1, 4), armonica (5)
Eileen Sánchez – vocal, chorus (1, 4)
Nego Haedo – tambor piano (2)
Manuel Silva – repique (2, 8)
Foque Gómez – chico (2)
Silvina Gómez – vocal, chorus (2)
Hernán Peyrou – vocal, chorus (2, 3, 10)
Cecilia De los Santos – chorus (2)
Andrés Ibarburu – cello (4)
Martín Puime Vivas – handpan (4)
Nadia Larcher – vocal (4)
Juan DeBenedictis – electric guitar, chorus (6)
Julieta Rada – vocal, chorus (7)
Fernando Silva – fretless bass (8, 10)
Gonza Díaz – percussions, ambients (8)
Sebastián Macci – vocal, piano, chorus (8)
Diego Paredes – tambor piano (9)
Jonny Nevez – repique (9)
Leroy Pérez – chico (9)
Edu “Pitufo” Lombardo – vocal (10)
Batata – platillos (10)
Raúl García – redoblante (10)
Lolito Iribarne – bombo (10)