研ぎ澄まされた水晶のように透明な美しさ。ケヴィン・ヘイズ、ホルヘ・ロッシ 初のデュオ作

Kevin Hays & Jorge Rossy - The Wait

ケヴィン・ヘイズ&ホルヘ・ロッシ 初デュオ作『The Wait』

90年代からニューヨークでしばしば演奏を重ねてきた二人の名手、ピアニストのケヴィン・ヘイズ(Kevin Hays)と打楽器奏者ホルへ・ロッシ(Jorge Rossy)が再会。ピアノとヴィブラフォンの編成で初のデュオ作『The Wait』をリリースした。トニーニョ・オルタ(Toninho Horta)がジョビン(A.C. Jobim)逝去後にトリビュートとして作曲した(1)「De Ton Pra Tom」で始まる今作には、二人のオリジナルやスタンダードをバランスよく収録。大胆と繊細が同居する深淵なサウンドに魅せられる美しいアルバムとなっている。

爽やかなミナスの風を感じたあとは、安寧感のある(2)「Moose Love」、室内楽的叙情の(3)「El Bardo」(いずれもホルヘ・ロッシ作曲)とつづく。
(5)「Misterioso」はセロニアス・モンク(Thelonious Monk)作曲。不思議な調性感のあるこの実験的な曲を、ピアノとマリンバで魅力的に再現する。そのミステリアスな雰囲気はつづくケヴィン・ヘイズ作曲の(6)「Row Row Row」でも継続し、このアルバムの前半の曲のつながりは特に印象的だ。

ケヴィン・ヘイズ作曲の(6)「Row Row Row」

(10)「Travessia」はブラジルのSSW、ミルトン・ナシメント(Milton Nascimento)のキャリア初期の名曲のカヴァー。ただでさえ物語的で美しい曲だが、ピアノとヴィブラフォンという徹底的に研ぎ澄まされたシンプルな編成で、二人の創造的な感性が見事に発揮された「トラヴェシーア」の演奏は格別だ。

アルバムはサックス奏者/作曲家のサラ・チャクサド(Sarah Chaksad)と音響技師パトリック・ゾッソ(Patrik Zosso)が立ち上げたスイスを拠点とする新進気鋭レーベル、Clap Your Hands (CYH) より2025年1月にリリースされた。

プロフィール

ピアノのケヴィン・ヘイズ(Kevin Hays)は1968年アメリカ合衆国ニューヨーク生まれ、コネチカット育ち。8歳からピアノを始め、15歳の頃にはプロとして演奏をしていた。自身のバンドのほか、ビル・スチュワート(Bill Stewart)トリオでの活躍やソニー・ロリンズ(Sonny Rollins)、ジュシュア・レッドマン(Joshua Redman)、ロン・カーター(Ron Carter)、パット・メセニー(Pat Metheny)といった巨匠たちとの共演でも知られる。メロディーを重視した歌心溢れる叙情的な演奏に定評があり、時折ヴォーカルをとることもある。

ヴィブラフォン/マリンバのホルヘ・ロッシ(Jorge Rossy)は1964年スペイン生まれの打楽器奏者/ピアニスト。幼少期からピアノや打楽器、14歳からヴィブラフォン、そして聴覚を向上させるためにトランペットも学んだ。1989年、ボストンに移りバークリー音楽大学でトランペットを学ぶが、2年ほどしてドラムに専念するようになり、ダニーロ・ペレス(Danilo Perez)のトリオなどで活躍。その後はカート・ローゼンウィンケル(Kurt Rosenwinkel)やブラッド・メルドー(Brad Mehldau)、ギジェルモ・クレイン(Guillermo Klein)らと活動を共にし、米国やスペイン語圏のジャズ・アーティストを繋ぐ重要な存在となっている。

Kevin Hays – piano, voice
Jorge Rossy – vibraphone, marimba

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