タイ発、衝撃のアフロ・グルーヴ。Salin 注目の新作
タイ王国バンコク出身、現在はカナダで活動する打楽器奏者/作曲家のサリン(Salin)の2枚目のスタジオアルバム『Rammana』。彼女自身が“アフロ・イサーン・ソウル”あるいは“アフロ・タイ・ファンク”と呼ぶ音楽性で注目を集める作品だ。
アルバムのタイトルになっているラムマナーとは、タイの伝統的な太鼓で、同種のものがラオスやカンボジアでも見られる。一般的には中国やマレーシアから伝わったとされるが、サリンこと本名サリン・チーワパンシー(Salin Cheewapansri)はこの楽器がマダガスカルやウラク・ラホイ1などのオーストロネシア系民族の移動を通じてアフリカから東南アジアに伝わったのではないかと推測している。彼女の音楽にはアフロビートやファンク、ジャズといったアフリカ系黒人のリズムが通底しており、そこにタイの民族音楽も交え独特のグルーヴを生み出す。
アルバムにはサリンのオリジナリティ/アイデンティティと、広く世界に訴求できるキャッチーさや洗練を両立した優れた楽曲が並んでいる。アジアの伝統を感じさせる歌唱にファンキーなブラス隊が絡む(2)「Ma’at (มา อัด…)」、美しい抒情詩(4)「Egungun」、タイのニャー・クー(Nyah Kur)族に伝わる伝統的な竹製の口琴(puaj)をフィーチャーしたサイケデリックな(8)「Puaj」、サリンのドラマーとしての実力が存分に発揮された軽快なジャズファンク(9)「Si Chomphu」、アルバムのタイトル曲でありウラク・ラホイの伝統音楽にインスパイアされた(10)「Rammana」など印象深い。
Salin Cheewapansri – drums, guitar, voice
Elli Miller Maboungou – ngoma drums
Michel Medrano Brindis – conga
Kicky FOOFOO – conga, ching-chap
March Tripob – bass
Danny Trudeau – bass
Paul Charles – bass
Lucas Zafiris – guitar, bass, keyboards
Pierre Harry Erizias – bass
Frank O’Sullivan – guitar
Dave Hjin – guitar
Khontan Pitukpon – phin, khene
Aum Suwamat – khene
David Osei-Afrifa – keyboards
Jordan Pistilli – keyboards
Armmy Ubonrat – voice
Alexandre Dion – saxophone, flute, horn arrangement (7)
Hichem Khalfa – trumpet
Farhan Remy – trumpet
Josiane Rouette – trumpet
Belinda Belice – voice
Christina Belice – voice
Thakoon Boonma – voice
Surat Nakwa – voice
Sallynee Amawat – 1st violin
Sari Tsuji – 2nd violin
Nelleke Daghner – viola
Amanda Keesmaat – cello
Aleksey Shegolev – strings and horns arrangement (10)
- ウラク・ラホイ(Urak Lawoi, タイ語:อูรักลาโว้ย)…主にタイ南部に居住するオーストロネシア系の先住民族。通称“海のジプシー”。 ↩︎