鬼才ジェネヴィーヴ・アルタディ新章!ビッグバンドとの共演で新たなマイルストーンを刻む『Another Leaf』

Genevieve Artadi - Another Leaf

Genevieve Artadi & Norrbotten Big Band 『Another Leaf』

ノウワー(Knower)のヴォーカリストとして知られるSSW、ジェネヴィーヴ・アルタディ(Genevieve Artadi)が新譜『Another Leaf』をリリースした。今作はスウェーデンのノルボッテン・ビッグバンド(Norrbotten Big Band)との共演となっており、彼女の過去作からの再演曲を中心に、迫力あるアレンジが施されたジェネヴィーヴ・ワールドの新章を堪能できるアルバムとなっている。ノウワーの相棒であるドラマーのルイス・コール(Louis Cole)も半分以上のトラックで参加しており、実質的にはノウワーの新作と言ってもよい素晴らしい内容だ。

このプロジェクトは、ジェネヴィーヴ・アルタディが2019年にノールボッテン・ビッグバンドのコンポーザー・イン・レジデンス1として招かれたことから始まった。これまで小規模な編成での経験しかなかった彼女は、17名以上のビッグバンドのために活動するという内容に圧倒され、当初はこの誘いを断ろうと思っていたというが、音楽家としての視野を広げるチャンスだと思い直して快諾。結果的に「ビッグバンドのために書くことで、メロディーやヴォイシングの可能性を深く探求できた」と語るほどに、彼女のキャリアにおける重要な作品となっている。

アルバムは2019年と2022年にスウェーデンでライヴ録音された。コロナ禍による一時中断はあったものの、その集大成が今作に反映されている──さらにおそらくは、彼女のこの得難い経験はノウワーの2023年のアルバム『Knower Forever』の大規模なオーケストラ・アレンジにも反映されている──。ただでさえ“普通ではない”彼女の楽曲に対して施されたオーケストラのスコアの、なんと奇妙なことだろう。ルイス・コールがドラムスを叩く冒頭の新曲(1)「Life Exploder」から、このプロジェクトが唯一無二の歴史的な成功として結実したことがすぐに感じ取れる。

(1)「Life Exploder」のMV。ジェネヴィーヴ・アルタディ自らが制作しており、彼女の感性が爆発

アルバムに収録された12曲はルイス・コールとの共作である(3)「Edge Of The Cliff」を除きすべてがジェネヴィーヴ・アルタディの作詞作曲。(6)「Forever Forever」、(8)「Nowhere To Go」、(10)「I Know」など、ビッグバンドのために過去作から新たなアレンジが施された曲も多い。ノルボッテン・ビッグバンドからは曲ごとに異なるメンバーがソリストとして起用されており、アルバムの音楽性に多様な彩りを加えている。

(10)「I Know」

アルバムのタイトル「Another Leaf」には、ジェネヴィーヴ・アルタディのこれまでの活動とは異なるアーティストとしての側面を見せたいという意図が反映されている。今作は彼女のソロキャリアにおける新たな挑戦であり、彼女のエクスペリメンタル・ポップとジャズ・フュージョンのルーツをビッグバンドのフォーマットで拡張した作品として、彼女の音楽家としての重要なマイルストーンとなっている。

(12)「Gray And White」

Genevieve Artadi 略歴

ジェネヴィーヴ・アルタディは、アメリカ合衆国を拠点とするシンガー/作曲家/プロデューサーであり、ジャズ、ポップス、エレクトロニカを融合させた独自の音楽スタイルで知られる。1982年生まれでロサンゼルスで育ち、幼少期から音楽に親しみ、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)でジャズを学び、そこで後のコラボレーターであるルイス・コールと出会った。

2011年にルイ・コールとエレクトロニック・ジャズ・ポップ・デュオ「Knower」を結成し、アルバム『Louis Cole and Genevieve Artadi』(2010年)、『Think Thoughts』(2011年)、『Life』(2016年)などをリリースし、独特の音楽性で多くの支持を集めた。

ソロアーティストとしては、2017年に『Genevieve Lalala』、2020年に『Dizzy Strange Summer』、2023年に『Forever Forever』をBrainfeederレーベルからリリース。DIY精神溢れるミュージック・ヴィデオの監督も手掛けるなど多才なアーティストとして活動し、現代音楽シーンで独自の地位を築いている。

Norrbotten Big Band 略歴

ノルボッテン・ビッグバンドは、スウェーデン北部ルレオを拠点とするジャズ・オーケストラ。1970年代に設立され、北スウェーデンの文化振興を目的に、伝統的なジャズから現代音楽、ポップス、エクスペリメンタルまで幅広いジャンルをカバーする。芸術監督のヨアキム・ミルダー(Joakim Milder)の指導のもと、国際的なアーティストとのコラボレーションで知られ、これまでにジョー・ロヴァーノ(Joe Lovano)、トゥーツ・シールマンス(Toots Thielemans)、マリア・シュナイダー(Maria Schneider)、マグヌス・リングレン(Magnus Lindgren)、クリス・ポッター(Chris Potter)、ランディ・ブレッカー(Randy Brecker)、デイヴ・リーブマン(Dave Liebman)といった著名なアーティストと共演を重ねてきた、現代ジャズの最前線を走るビッグバンドである。

Genevieve Artadi – vocals
Cosima Olu – vocals
Adam Forkelid – piano, synths (2, 8, 10, 12)
Britta Virves – piano, synths (1, 3, 4, 5, 6, 9, 11)
Petter Olofsson – bass
Louis Cole – drums (1, 3, 4, 5, 6, 9, 11)
Sebastian Ågren – drums (2, 8, 10, 12)

Norrbotten Big Band :
Joakim Milder – conductor

Håkan Broström – alto saxophone, soprano saxophone, flutes
Janne Thelin – alto saxophone, clarinets, flute
Mats Garberg – tenor saxophone, flute
Robert Nordmark – tenor saxophone, flute, clarinets
Per Moberg – baritone saxophone, flute

Bo Strandberg – trumpet, flugelhorn
Magnus Ekholm – trumpet, flugelhorn
Dan Johansson – trumpet, flugelhorn, synth trumpet
Jacek Onuszkiewics – trumpet, flugelhorn
Michal Tomaszczyk – trombone
Kristian Persson – trombone
Mats Äleklint – trombone
Björn Hängsel – bass trombone, tuba

  1. コンポーザー・イン・レジデンス(Composer-in-Residence)…特定の期間(数週間から数年まで様々)にわたり、組織や地域に帯同しながら作曲活動を行い、その団体やコミュニティと密接に連携する作曲家のポジション。 ↩︎

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