LA現代ジャズ最前線!ミナスの風も吹くジェネヴィーヴ・アルタディ新譜『Forever Forever』

Genevieve Artadi - Forever Forever

ジェネヴィーヴ・アルタディ、世界観を深めた最新作

LAを拠点とするシンガーソングライター、プロデューサーのジェネヴィーヴ・アルタディ(Genevieve Artadi)の新作『Forever Forever』がリリースされた。マインドフルネスを世界に広めたベトナムの僧侶ティク・ナット・ハン(Thích Nhất Hạnh, 1926 – 2022)の精神的な教えを基に、彼女の人生や人間関係、成長、冒険について振り返るというコンセプトの作品だが、リスナーにとってはとてつもなく新鮮な音楽体験ができる作品となっている。

前作『Dizzy Strange Summer』に続き、フライング・ロータス(Flying Lotus)が主宰するレーベルであるBrainfeederからのリリース。しかしながら打ち込みが多用された前作からはサウンド面で大きく変貌し、Knowerの相方ルイス・コール(Luis Cole)を始め、チキータ・マジック(Chiquita Magic)、ペドロ・マルチンス(Pedro Martins)ら現在の音楽クリエイティヴ・シーンの精鋭たちが集い、無邪気さと洗練の入り混じった独創的なバンド・サウンドを展開している。中でもギタリスト/共同プロデューサーとして参加するペドロ・マルチンスの大きな貢献は、彼の兄貴分的な存在である同郷ブラジルのアントニオ・ロウレイロ(Antonio Loureiro)の音楽の影響を強く感じさせるものになっていることからも明らかだ。ここに元々独創的なコンポージングをするジェネヴィーヴ・アルタディのセンスが見事に絡みあい、複雑で美しくもつれる糸のような様相を呈しているのが今作の印象だ。

(2)「Visionary」。70〜80年代を思わせるパンク・ファッションに身を包んだバンドメンバーのMVも必見!

この素晴らしい音楽のジャンルを特定することは難しいし、その必要もない。
彼女がこれまで聴き研究し血肉としてきた米英やヨーロッパの音楽に、ペドロ・マルチンスが吹き込むミナスその他ブラジル音楽の風、そして他にも多くの精鋭たちが少しずつアイディアを注ぎ完成した音楽は神々しさすら感じさせる完成度だ。一筋縄ではいかないコード進行とメロディの絡み合いだけでも相当に奥が深いが、各人の即興ソロも相当なもの。一聴して「なんだこれ!」と新鮮な驚きが連続するものであることは間違いない。

(4)「I Know」

Genevieve Artadi 略歴

ジェネヴィーヴ・アルタディは1982年米国カリフォルニア州ロサンゼルス生まれ。両親はアマチュアミュージシャンで、父親はギタリスト、母親はシンガーだった。
一緒に音楽を作る両親の姿を見て育ったジェネヴィーヴ自身もハイスクールでバンドを組み、ポーティスヘッド(Portishead)やマッシヴ・アタック(Massive Attack)らの影響を受けたトリップホップを演奏。さらに音楽を探求するようになり、90年代の始めにはナタリー・コール(Natalie Cole, ナット・キング・コールの娘)のアルバム『Unforgettable』でジャズに興味を抱き、マイルス・デイヴィス(Miles Davis)の『Kind of Blue』でインストゥルメンタル音楽の美しさを知るようになったという。

1998年に「Pollyn」というエレクトリック・トリオを結成、2003年に最初のシングルをリリース。
カリフォルニア州立大学でジャズ研究の学士号を取得した彼女は2009年にルイス・コールと出会い、デュオユニット「Knower」を結成。ペドロ・マルチンスやアントニオ・ロウレイロなど南米ブラジルの音楽家たちとも交流を持つようになり、徐々にその名を世界に知られるようになっていった。

(9)「Plate」。MVも謎にシュールである。

Genevieve Artadi – vocals
Chiquita Magic – keyboards, vocals
Pedro Martins – guitars, vocals
Chris Fishman – keyboards
Louis Cole – drums, synth bass
Henry Halliwell – additional production 

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