シリアとレバノン出身の男女デュオ、カズドゥーラ
カナダ・トロントを拠点に活動する男女デュオ、カズドゥーラ(Kazdoura)のデビュー作『Ghoyoum』。内戦のため祖国を離れたシリア出身の歌手レーン・ハモ(Leen Hamo)と、レバノン出身で移民としてカナダに渡っていたマルチ器楽奏者ジョン・アブー・シャクラ(John Abou Chacra)は、2020年のベイルート港爆発事故1後のトロントでの募金活動の中で出会い、強力な相乗効果を証明する音楽作品を作り上げた。
バンド名「Kazdoura(アラビア語:كزدورة)」は「旋風」や「冒険」を意味し、マカーム2などアラブ音楽の要素をジャズやファンクに自然と溶け込ませる彼らの音楽性を象徴している。収録曲は彼らの個人的な経験とアラブの文化的遺産へのオマージュとして制作されており、特に戦争の犠牲者や移民の苦難をテーマにした楽曲が多い。中東系の移民が直面している困難に光を当て、自らの経験を、70年代トルコロックの影響を受けたアラブ文化遺産に深く根ざした説得力のあるサウンドへと昇華させており、「アラブのディアスポラ・コミュニティの声を代弁し、戦争や移住によるトラウマを音楽を通じて癒す試み」と位置付けられている。
アルバムのリードシングルの一つである(4)「Hamool El Safar」は、シリアの詩人ムサブ・アル・ノマイリー(Mosab Al Nomairy)の詩に二人が曲をつけたもので、シリア東部のユーフラテス川沿いの田園地帯の風景にインスピレーションを得たもの。
サウンドは洗練されており、ファンクやサイケロック、エレクトロニック、そしてジャズを学んだジョン・アブー・シャクラによるソウルフルなサックスの響きも効果的だ。
(6)「Khayal」は想像や夢をテーマにしたシングル。
(7)「Titi Titi」は、心に深く響く歌詞を通して故郷への憧憬を表現し、煙と闇、そして枯れたバラで満たされた故郷の鮮やかな情景を描き出している。
今作の紹介文には、このようにある:
このアルバムは、シリア、レバノン、パレスチナ難民、世界中の戦争の犠牲者、そしてより良い世界を夢見るすべての人々に捧げられています。
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