ベネズエラ出身、NYで活躍する3人が初めて組んだアルバム
全員がベネズエラの首都カラカス出身だからカラカス・トリオ(Caracas Trio)という安直なネーミングや、あまり売る気のなさそうなジャケットはさておき、『Folklore』は確かなクオリティのアルバムだ。このトリオではデビュー作だが、3人はいずれもニューヨークの現代ジャズシーンを彩る手練れで、洗練された現代ジャズに、タイトルに掲げるようにベネズエラの多様な伝統を織り交ぜている。
カラカス・トリオのメンバーはヴィブラフォン奏者のフアン・ディエゴ・ビジャロボス(Juan Diego Villalobos)、鍵盤奏者のガブリエル・チャカルヒ(Gabriel Chakarji)、そして打楽器奏者ダニエル・プリム(Daniel Prim)。ヴィブラフォン、生ピアノ/電気ピアノ/シンセベース、ドラムスという編成を軸に、場面によってはそれぞれがパーカッションも担当しながら複雑かつ色彩豊かなリズムやハーモニーを作り上げてゆく。ベネズエラの伝統をジャズの文脈の中に大胆に取り入れている彼らのサウンドは、──とりわけアントニオ・ロウレイロが象徴する──ブラジルの“ミナス新世代”を彷彿させるほど未来志向で豊穣だ。
アルバムの幕開けとなる(1)「Africa」はアフロ・ベネズエラへのストレートな敬意の表れと、今作がその文化の系譜の延長であると宣言する象徴的な楽曲だ。声はゲスト参加する打楽器奏者カルロス・タレス(Carlos Talez)。彼は引き続き(2)「Folklore」でも出番は少ないものの印象的な声で参加しており、その長閑なタイトルとは裏腹にカオティックな現代的フュージョン・サウンドが展開される楽曲の最終章をアフロ・ベネズエラへの讃歌として締め括る役割を担う。
(4)「VIM Interlude」 と(8)「Let me Smoke」でゲスト参加するオレステス・ゴメス(Orestes Gómez)がもたらすエレクトロニックの要素はその他の楽曲との違いを明確に提示し、アルバムにサウンド面での多様性を与える。中でもジャネル・マクダーモス(Janelle McDermoth)がスポークン・ワードを担当する(8)「Let me Smoke」は象徴的だ。歌詞は政治的で、独裁者であるマドゥロ大統領への明確なプロテスタントとして機能している。
古いレシピや過去の人生を忘れない
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それが瓦礫の下のものや腐敗したシステムによって失われたものであっても
私たちは夢を見る。植民地化された土地や恣意的な国境ではなく、完全な家族と満腹の胃袋を夢見る
私たちは抗議する。祈る。父たちの信仰を持って行進する。母たちの要求を満たすために海を渡る
私たちは家族を作る。抵抗を作る。愛を作る。記憶に値する人生を作る
すべての呼吸で意味を作る。 すべての呼吸で
正義がパイプドリームなら、煙を吸わせて
Caracas Trio :
Juan Diego Villalobos – vibraphone, malletstation, keybass, percussion
Gabriel Chakarji – piano, keyboards, keybass, synthesizers, percussion
Daniel Prim – drums, percussion
Guests :
Carlos Talez – vocals (1, 2, 6), percussion (9)
Rafa Pino – text & vocals (4)
Orestes Gómez – drums & production (4, 8)
Janelle MacDermoth – text & vocals (8)