リオ新世代SSWレオ・ミデア、遠きプーリアから届けるブラジル音楽の鼓動

Leo Middea - Notícias de Puglia

ブラジルへの愛とサウダーヂに溢れたレオ・ミデア新譜

ブラジル出身、2014年のデビュー後にヨーロッパに移住し、現在はスペインのバルセロナを拠点とするシンガーソングライター、レオ・ミデア(Leo Middea)が6枚目のスタジオ・アルバムとなる『Notícias de Puglia』をリリースした。「プーリア1からの便り」のタイトルが示すのは、旅を続ける彼らしい、故郷ブラジルへのサウダーヂの想いだ。

「アタバキ2は、私自身なのだろうか?」と歌う(1)「Atabaque」から、彼の持ち味であるポピュラー音楽としての親しみやすさを保ちながらも、ブラジル人としてのアイデンティティを強調するような楽曲が並ぶ。アフロ・ブラジル音楽、サンバ、パゴーヂ…彼の体に血のように流れるそれらの音楽が、ドリームポップのような洗練されたサウンドに乗って躍動。過度に感情を表すことのない柔和なヴォーカルだからこそ、その切なさは何倍にもなり、体温を伴って伝わってくる。

(2)「Verano」ではジャズやサンバに加え、フラメンコの要素が取り入れられており、彼の新たな住処=スペインの文化が加わる。ルーカス・デルガド(Lucas Delgado)の情熱的なフラメンコギターに、フビーニョ・アントゥヌス(Rubinho Antunes)の空を切り裂くようなトランペット。タイトルはスペイン語で「夏」。レオ・ミデアの季節は、やはり夏しかない。
歌詞もポルトガル語とスペイン語が混ざり合っており、MPBのスターであるミルトン・ナシメントやジャヴァン、ブラジルのソウルフードであるアサイーに言及しつつ、彼の現在地を表現する。

(2)「Verano」

しっとりしたサンバ(3)「Bloco pra Tristeza」で、レオ・ミデアはメロディメイカーとしての非凡な才能を存分に発揮。アントニオ・ネヴィス(Antonio Neves)による気怠いトロンボーンも最高。ポップスにおいて、多人数のコーラスを効果的に組み込めるのは彼くらいだろう。

(4)「Praia Vermelha do Sul」も素晴らしい。ブラジルらしさ全開のリズムにメロディー、楽器群。そしてサビ前のグッとくるsus43。アカデミックな音楽家が避けがちな表現を、愚直に、ここぞとばかりに突っ込んでくるセンスは最高だ。

(4)「Praia Vermelha do Sul」

アルバム後半もサンバを基調とした優れた楽曲が続く。チンバラーダ(Timbalada)4のサウンドを彷彿させる(8)「Fio de Bronze」は自己肯定と内省をテーマにした曲で、リオデジャネイロからバルセロナまでの自らの軌跡を振り返りつつ、歌詞の最後では「君の美しさはカエターノのビーショ5のように稀有だ」という一節でMPBへの愛を表現している。

(8)「Fio de Bronze」

Leo Middea プロフィール

レオ・ミデアは1995年ブラジル・リオデジャネイロ生まれのシンガーソングライター。2014年に若干18歳でデビューアルバム『Dois』をリリースし、アルゼンチンでの公演を皮切りにツアーを開始。その後ポルトガルのリスボンへと活動拠点を移した。

サンバやボサノヴァといったブラジル音楽(MPB)の伝統的なエッセンスと、現代的なインディー・ポップの感性を融合させた、太陽のような明るさと親密さを併せ持つサウンドが彼の持ち味。これまでの代表作は『Vicentina』(2020年)や『Gente』(2023年)など、いずれも高い評価を得ている。

2024年にはポルトガルのユーロヴィジョン代表選考会であるフェスティヴァル・ダ・カンサォン(Festival da Canção)に「Doce Mistério」という曲で出場し、外国人アーティストとして初めて決勝に進出するという歴史的な快挙を成し遂げた。

ユーロヴィジョン・ポルトガル代表選考会で「Doce Mistério」(今作未収録曲)を歌うレオ・ミデア

Leo Middea – vocals, guitar
Lucas Delgado – acoustic guitar, electric guitar, synths, beats, bass
Breno Viricimo – keyboards
Rubinho Antunes – trumpet
Antonio Neves – trumbone
Bruno Marques – drums
Thomas Harres – drums
Danilo Moura – percussion
Kainã do Jeje – percussion
Thomas Harres – percussion

Choir :
Sofia Nunes, Inês Koehler, Gabriel Franco, Juliana Anjo, Eduardo Mirante, Tuila Teixeira, Fernanda, Francisca Peixeiro, Matilde Monti, Inês Vilela, Pietra Pi, Victor Bigliardi, Ynaiara Guedes, Felipe Maciel, Gabriella Hedegaard, Fernanda Lira, Lucia Sonia Teresa Flora, Teresa Guisado, Juliana Aru, Milla Magalhães, Rach Araújo, Arthur Albaz, Leo Middea, Breno Viricimo, Jason Gastaud-Lamy, Rômullo Moraes

  1. プーリア(Puglia)…イタリア南部の州。青い海と白い街並みが融合する非常に風光明媚な風景で知られる。 ↩︎
  2. アタバキ(Atabaque)…カンドンブレ、サンバ、マクレレ、カポエイラといったブラジル音楽で用いられる、木と牛革で作られた円錐形の太鼓。土着宗教でも重要な役割を担う。 ↩︎
  3. sus4(サスフォー)…コードの3度の音を完全4度にずらした、不安定で浮遊感のある和音。主にドミナントやトニックの前に配置し、4度の音が3度に解決することで緊張感から安定感を生み出す。 ↩︎
  4. チンバラーダ(Timbalada)…カルリーニョス・ブラウン(Carlinhos Brown)が1989年に結成した、ブラジル・サルバドール出身のパーカッションバンド。数百人のアフリカ系ブラジル人打楽器奏者を擁し、主に「チンバウ」という打楽器を用いたパワフルなバイーアのサウンド(サンバ・ヘギ)で世界的に知られる。 ↩︎
  5. カエターノのビーショ…ブラジルを代表するシンガーソングライター、カエターノ・ヴェローゾ(Caetano Veloso)の1977年のアルバム『Bicho』を指す。この一節は、2024年のフェスティヴァル・ダ・カンサォンで披露した「Doce Mistério」からのセルフ・オマージュでもある。 ↩︎

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