あらゆる音楽をデヴィッド・フュージンスキー色に染めた傑作
米国のギタリスト、デヴィッド・フュージンスキー(David Fiuczynski)の1999年のアルバム『Jazzpunk』は、今こそ再評価されるべき作品かもしれない。彼にとってのヒーローたちの楽曲をジャズの技術とパンクの精神で再解釈したこのアルバムは、主流のブレイク・スルーとはならなかったかもしれないが、潜在的な意識面でジャズという音楽に対する“革新”の流れを加速させた傑作だと思う。
アルバムはカヴァー曲を中心に構成されており、パット・メシーニ(Pat Metheny)の(1)「Bright Size Life」やジミ・ヘンドリックス(Jimi Hendrix)の(2)「Third Stone From The Sun」、フレデリック・ショパン(Frédéric Chopin)の(3)「Chopin Prelude Opus 28 No. 4」、チック・コリア(Chick Corea)の(6)「La Fiesta」といった名曲を、忖度せず先入観に捉われずに再構築している。ラウドで“変態的”と形容される彼のギターは、巨匠たちが遺した音楽をも支配的な自分自身のカラーに染め上げる。この挑戦的なプレイは当時は賛否両論があったようだが、ジャズやフュージョンの境界をさらに広く押し広げたことは事実だろう。
ロック、ファンク、中東や東欧のワールドミュージックといった多様なジャンルを取り入れたこのアルバムは、デヴィッド・フュージンスキーがのちにマイクロトーナル(微分音)音楽の探求を深める起点ともなった。商業的には成功しなかったかもしれないが、今もなおジャンルを超えた実験的な演奏の一例としてインディペンデントなジャズシーンで参照され、影響を与え続けている。
David Fiuczynski 略歴
デヴィッド・フュージンスキーは1964年3月5日、米国ニュージャージー州ニューアーク生まれのギタリスト/作曲家/教育者。父親がドイツ人のため幼少期をドイツで過ごしたことが後に異なる音楽要素を融合させるスタイルの基盤を築いた。
10代後半に米国に戻り、ハンプシャー大学で学び、その後ニューイングランド音楽院でジャズを専攻。キャリアの初期は、ジャズ、ロック、ファンクを混ぜた革新的なアプローチで注目を集めた。1994年に人気ジャムバンド、メデスキ・マーティン&ウッド(Medeski Martin & Wood)のジョン・メデスキ(John Medeski)との双頭名義のアルバム『Lunar Crush』をリリースし、その独特の個性で大いに注目された。
特にスクリーミング・ヘッドレス・トーソズ(Screaming Headless Torsos)のリーダーとして知られ、エクレクティックなメタル/ジャズ/ファンクサウンドを展開。また、実験的なクレズマー音楽グループであるハシディック・ニューウェイヴ(Hasidic New Wave)のメンバーとしても活動し、ユダヤ音楽とジャズの融合を探求した。
セッションミュージシャンとして約100の録音に参加し、日本を代表する鍵盤奏者・上原ひろみ(Hiromi Uehara)の作品にも参加するなど活躍。カルト的な人気のギタリストとして知られている。
現在はバークリー音楽大学のプログラムである「Planet MicroJam Institute」のディレクターを務め、多文化的な音楽教育を推進している。
David Fiuczynski – guitars
Fima Ephron – bass
Daniel Sadowick – percussion
Gene Lake – drums
Time Lefebvre – bass
Zach Danzinger – drums
Billy Hart – drums
Santi DeBriano – bass
Rufus Cappadocia – cello