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中東音楽

  • 2025-10-07
  • 2025-10-05

文化も時代も超越する音楽の深淵──。シークレット・トリオ新譜『Old Friends』

音楽という地球上の普遍言語で人々を繋ぐというヴィジョンのもと、20年近く活動するシークレット・トリオ(The Secret Trio)の新譜『Old Friends』がリリースされた。マケドニア出身のクラリネット奏者イスマイル・ルマノフスキー(Ismail Lumanovski)、アルメニア系アメリカ人のウード奏者アラ・ディンジャン(Ara Dinkjian)、そしてトルコ出身のカーヌーン奏者タメル・プナルバシュ(Tamer Pınarbaşı, Tamer Pinarbassi)の3人が奏でる音楽は微分音を用いるなど東欧・中東の民族音楽に根差しつつ、ジャズや西洋のクラシックともクロスオーヴァーするなど、独自の国境なき世界を巧みに表現する。

  • 2025-08-27
  • 2025-08-26

トゥモローズ・ウォリアーズから、また凄い新人が現れた! 中東ルーツのナダフ・シュニールソン、デビュー。

中東にルーツを持つイギリス・ロンドン出身のドラマー/作曲家ナダフ・シュニールソン(Nadav Schneerson)が、7人編成のバンドを率いて録音したデビュー作『Sheva』が面白い。多様かつ優れた若手ジャズ・アーティストを輩出し続けるトゥモローズ・ウォリアーズ(Tomorrow’s Warriors)出身の彼は、文化的多様性の坩堝である同団体で得た多くの学びと、ユダヤ人である自身のルーツを融合させ、熱狂的なジャズ・アンサンブルを創り上げた。

  • 2025-08-10
  • 2025-08-09

すべての難民や戦争の犠牲者に捧ぐ。中東出身男女デュオ、Kazdoura のデビュー作『Ghoyoum』

カナダ・トロントを拠点に活動する男女デュオ、カズドゥーラ(Kazdoura)のデビュー作『Ghoyoum』。内戦のため祖国を離れたシリア出身の歌手レーン・ハモ(Leen Hamo)と、レバノン出身で移民としてカナダに渡っていたマルチ器楽奏者ジョン・アブー・シャクラ(John Abou Chacra)は、2020年のベイルート港爆発事故後のトロントでの募金活動の中で出会い、強力な相乗効果を証明する音楽作品を作り上げた。

  • 2025-07-27
  • 2025-07-26

レバノンからパリに亡命したマルチ芸術家タニア・サレー、抑制された表現で伝える不安と希望

レバノンを代表する歌手、タニア・サレー(Tania Saleh)は母国の様々な状況(彼女はそれを“一連の不幸な出来事”と呼ぶ)から、ついに祖国を離れる選択をし、2022年にフランス・パリに移住した。彼女の最新作『Fragile』は、スーツケースに貼られた“壊れやすい”を表すその言葉の通り、故郷を離れることによる心理的な重荷や、亡命者が抱く根無し草のような感覚をテーマに作られている。

  • 2025-06-29
  • 2025-06-29

ペルシャとクルドにルーツを持つ新星SSWエラナ・サッソン、伝統文化と現代ジャズを繋ぐ美しい対話

ペルシャとクルドをルーツに持つアメリカ生まれ・スペイン在住の歌手/作曲家エラナ・サッソン(Elana Sasson)の2作目のアルバム『In Between』は、自身のルーツである中東音楽をベースに、現代ジャズやラテン、地中海音楽の要素も交えた作品。バンドはコロンビア出身のピアニスト、サンティアゴ・ベルテル、キプロス出身のベース奏者マノス・ストラティス、そしてベルギー出身のドラムス奏者ヴィクトール・ゴルトシュミットの国際色豊かなトリオ編成を中心としており、穏やかなジャズに乗せて歌う抒情詩のような美しさが印象的なアルバムとなっている。

  • 2025-05-14
  • 2025-08-10

イスラエルの天才ピアニスト、ガイ・ミントゥスが皮肉を込めて伝える『偉大なイスラエル歌曲集』

イラク、モロッコ、ポーランドにルーツを持つイスラエルのピアニスト、ガイ・ミントゥス(Guy Mintus)がイスラエルの音楽に焦点をあてた『The Great Israeli Songbook』は、ソロピアノの新しい名盤だ。キャッチーだが心に残る美しいメロディーから、中東特有のマカームの旋律まで、イスラエルに伝わるバラエティ豊かな名曲を天才的なピアノで吟遊詩人のように現代に伝えている。

  • 2025-03-09
  • 2025-03-08

サイケに渦巻く宇宙的グルーヴ!現代に蘇ったアナドル・ロックの注目バンド、Şatellites 新作

イスラエル・テルアビブを拠点とする6人編成のバンド、シャテライツ(Şatellites)が2ndアルバム『Aylar』をリリースした。今作は2021年リリースのデビューアルバム『Şatellites』で確立した70年代のアナトリアン・ロックに強い影響を受けた独創的なスタイルをさらに発展させた作品となっており、西洋音楽には見られない独特の音階や不穏に渦巻くサイケデリックなグルーヴが面白い作品だ。

  • 2024-12-10
  • 2024-12-10

超絶技巧なサントゥールとドラムスの驚異のデュオ「Marvash」が導くペルシアン・ジャズの新時代

イラン・テヘラン出身のサントゥール奏者/作曲家スィヤーヴァシュ・カムカール(Siavash Kamkar)と、オランダ・ユトレヒト出身のドラマー、マーティン・スーターブローク(Martijn Soeterbroek)のデュオ・ユニット、マルヴァッシュ(Marvash)の音楽が面白い。

  • 2024-12-07
  • 2024-12-07

驚異の微分音ピアノ。イスラエルのディナ・キトロスキー、激動の体験が生み出す未知のジャズ

イスラエルのピアニスト、ディナ・キトロスキー(Dina Kitrossky)のデビューアルバム『Waves』は2023年の年末にリリースされた。彼女のピアノはマカーム(アラビア音楽の旋法)を取り入れた音楽を弾くために特別な調律が施されており、微分音が特徴的な強く印象に残る旋律を奏でる。それは聴衆の興味関心を引くための姑息な戦術などではなく、その深い音楽の先には西洋のクラシックや中東の民族音楽、彼女の両親が聴いていたロシアの音楽、その他様々な世界中の音楽を経由して辿り着いた彼女の独創的な視点から生まれる、音の芸術の未来の兆しがある。

  • 2024-11-09
  • 2024-11-08

イランのピアニスト、ハムゼ・イェガネ。独創的なペルシアン・ジャズで見せる濃厚な音楽世界

ペルシアン・ジャズの雄、イラン・テヘラン出身のピアニスト/作曲家ハムゼ・イェガネ(Hamzeh Yeganeh)の新譜『Hand in Hand』がリリースされた。基本的にピアノトリオ編成で、エレクトリック・ベースのイディン・サデグザデ(Idin Sadeghzadeh)、ドラムスのアミン・タヘリ(Amin Taheri)とともに奏でるペルシャの伝統音楽を取り入れた独創的なジャズ・フュージョンは、なかなか他では聴けない楽しさがある。

  • 2024-09-23
  • 2024-11-23

トランペットに新時代到来! イブラヒム・マアルーフが導くジャズ・ルネッサンス

フランスのジャズ・トランペットのスーパースター、イブラヒム・マアルーフ(Ibrahim Maalouf)が16枚目のスタジオ・アルバム『Trumpets of Michel-Ange』をリリースした。編集やオーバーダブを用いず、大人数のバンドでライヴ録音された作品で、凄まじいほどの熱を帯びる。“ミケランジェロのトランペット”というタイトルは単にアルバムのタイトルというだけでなく、半世紀以上前に彼の父親が発明し、彼のトレードマークでもあるユニークな四分音トランペットを世界に広め、誰もが楽しめるようにすることを最終目標とする、大規模な教育プロジェクトの名称(T.O.M.A.)でもある。

  • 2024-06-17
  • 2024-06-16

オリエンタル・マカームの新時代を開拓するエジプトの天才ウード奏者モハメド・アボゼクリ

エジプトの天才的ウード奏者モハメド・アボゼクリ(Mohamed Abozekry)の新作『Roh El Fouad』。とかく伝統楽器としての側面が注目され、古典的な振る舞いを求められがちなウードという楽器の伝統に囚われない自由で先進的な演奏が新鮮。6人編成のバンドでアラビック・ミュージックをジャズの語法に持ち込んだ、大胆かつ美しいアルバムだ。

  • 2024-04-29
  • 2024-05-02

10年以上ぶりのイダン・ライヒェル・プロジェクト新作!世界をつなぐ珠玉のサウンド、再び。

イスラエルを代表するSSWであるイダン・ライヒェル(Idan Raichel)が、Idan Raichel Project 名義の新作『מגדל של אור』をリリースした。タイトルは光の塔(Tower of Light)と訳される。イダン・ライヒェル・プロジェクトとしては2013年の『Quarter to Six』以来、実に10年以上ぶりのアルバムだ。音楽性の根幹の部分はこれまでと変わらず、特定のジャンルに縛られずに様々な音楽文化を融合し、卓越したメロディーメイカーとしてのセンスで至上のポピュラー音楽に仕上げたものとなっている。