現代ブラジル音楽の旗手
アントニオ・ロウレイロ(Antonio Loureiro)といえば、現代ブラジル音楽の中でもっとも人気のあるアーティストの一人であることは疑いようがない。
マルチ奏者でもある彼は、カート・ローゼンウィンケルのバンド「Caipi band」においてはパーカッション奏者だったし、ソロでの来日公演ではピアニストでありヴォーカリストだったし、ヴィブラフォン奏者としてアルバムも出しているし、代表曲「Luz da Terra」ではローズピアノ、ギター、ベース、ドラムスといった楽器を一人でこなすMVでも知られている。
2018年、待望の新作で見せた“現在進行形の音楽”
そんな“現代ブラジル音楽の旗手”が2018年にリリースした新作『Livre』は、世界の最新の音楽シーンを色濃く映し、彼独自のサウンドに落とし込んだ作品といえる。
今や世界中のアーティストが、YouTubeなどで自らの音楽を発信し、リアルタイムで受け取れる時代だ。
ブラジルに住むアントニオ・ロウレイロも例外ではなく、遠く離れたアルメニアの作曲家/ピアニストのティグラン・ハマシアン(Tigran Hamasyan)や、さらにはメタル、プログレといったジャンルの音楽家からも大きな影響を受けているらしい。
例えば(2)「Jequitiba」は5連符のピアノのバッキングの上で、3連符のヴォーカルが乗るというおそろしい楽曲などにそうした影響が垣間見られる。
全体的なサウンドはカート・ローゼンウィンケルのCaipiバンドを彷彿とさせる部分もあるが、音楽的な豊かさや面白さは正直言ってこちらが上だ。
ゲストの面々も超豪華
アルバムにはネットを通じて話題になったLAのユニット”Knower”のジェネヴィーヴ・アルターディ(Genevieve Artadi)や、Caipiバンドでの盟友カート・ローゼンウィンケルにペドロ・マルチンス、フレデリコ・エリオドロといった面々、さらにはピアノ/シンセでアンドレ・メマーリもゲスト参加している。
これらの名前を見れば“約束された名盤”だが、アルバムの中には常に予想を裏切るような展開が現れ、アントニオ・ロウレイロが現代で最も重要なミュージシャンと言われる所以を再確認できる。