Apple Music 各国の“トップ100”で知る世界の最新音楽事情がとても面白い

ヒットチャートには各国の文化的傾向があらわれている

Apple社の定額制ストリーミングサービス、Apple Musicでは、各国でもっとも聴かれている楽曲のヒットチャート「トップ100」を見ることができる。そしてこれが、すごく面白い。

多くの国で上位にくる全世界的ヒット曲もあれば、その国でしか聴かれていないだろう曲やアーティストが多くの割合を占めている国もあり、聴いてみると新しい音楽を発見できたりもする。

私がよくチェックしている国のランキングボードを紹介しようと思う。
最後に日本のチャートも紹介しているが、ほかの国と比べて日本の流行音楽の特異性が浮き彫りになっている。

※ランキングは毎日更新されているので、必ずしもここで書いた通りの傾向が現れていない場合もあると思う…
また、あくまでApple Music独自のランキングのため、国によってサービス加入率などの偏りがある可能性も考慮されたい。

トップ100:グローバル

まずは全世界トータルでのランキング。これはもう見ての通り。完全にヒップホップやR&Bの覇権。リズムやビートが強調された音楽が好まれていることがわかる。

トップ100:USA

世界のマーケットをリードするアメリカ合衆国のランキングは、ほぼ「トップ100:グローバル」と変わらない。Apple Music加入者数も世界1位で、米国内ではSpotifyよりも多いようだから、グローバルのランキングへの影響も大きのだと思う。
やはり上位はヒップホップ、R&Bといったジャンルだ。ロック・ミュージックがランキングに顔を出すことはなくなってしまった。

トップ100:UK

米国と同じ英語圏で、音楽シーンも最先端のイメージがあるイギリスのランキングは、米国よりは多様性があるように感じるが、ヒップホップやダンスミュージックが主流だ。
日本でいう「洋楽」は、一般にはこれら米国や英国の音楽シーンの動向のことを指している。

トップ100:フランス

なにかとオシャレなイメージが先行するフランス。近年はテロや暴動といったニュースも多くそのイメージが崩れがちだが、音楽については“渋谷系”にも影響を与えたフレンチポップや、アコーディオンが特徴的なミュゼットなど、おしゃれなイメージがあるが…どうだろう。ランキングを聴いてみよう。

…はい、フランスもやっぱりヒップホップですね。

とはいえ、フランス語のヒップホップはミュゼットやマヌーシュスウィング等の影響もあるためか、米国シーンと比べればやはりオシャレな音使いだ。

フランスのランキング上位に度々顔をだすAya Nakamura(アヤ・ナカムラ)というアーティストが気になるが、彼女は日本風の名前を名乗っているだけで日本とは何の繋がりもないようだ。

トップ100:スペイン

ギター発祥の国ともいわれるスペイン。古くから音楽文化が発展し、多数のクラシックの名曲が生まれてきた。ロマ音楽が由来の情熱的なフラメンコも人気だ。

スペインのTOP100には、英語の曲は世界的ヒットを除きあまり登場して来ず、代わりにラテン系のR&Bやポップスが多い。ヒップホップの影響を受けた音楽が多いものの、米国のようにランキングがヒップホップに独占されることはないようだ。

トップ100:ブラジル

南米ブラジルの音楽といえば、日本でも街中でボサノヴァやショーロといった音楽をBGMとして聴く機会はとても多い。

しかし、現地の最新ヒット曲にそうしたジャンルの曲は一切登場しない。
若者に大人気なのが、セルタネージョというジャンル。男性デュオで歌われることが多い一種のカントリーミュージックで、音楽的には相当にいなたいジャンルなのだが、なぜか大人気なのだ。
他にはバイレファンキやアシェといったダンスミュージックも人気だ。
また、他国に比べ異常にライブバージョン(“Ao Vivo”と表記されていることが多い)が聴かれていることも特徴的だ。

さぁ、さらに色々な国のヒットチャートを聴いていってみよう。

トップ100:イスラエル

当サイトは音楽作品の紹介をメインにしているが、中でもイスラエル・ジャズの登場回数はとても多い。今、ジャズにおいてはイスラエル勢の活躍がめざましく、イスラエルの伝統音楽を持ち込んだり、最先端のエレクトロミュージックと融合させたりしながら面白い音楽を創り出している。

そんなイスラエルでは、一般にどんな音楽が好まれているのだろうか。

ヒットチャートは多くがヘブライ語のタイトルだ。
聴いてみると、「イスラエルジャズ」同様に、現地の伝統的な音楽とヒップホップやR&B、エレクトロミュージックが見事に融合した、独特なポップスといった印象の斬新な楽曲が多い。どれもなかなか聴きごたえがあるし、沼の予感だ…

中東のシリコンバレーとも呼ばれ、ITやサイバーセキュリティの分野でも先行するイスラエル。これからはその音楽シーンも見逃せない。

トップ100:サウジアラビア

イスラエルのランキングを見た後にサウジアラビアのランキングを見ると、こちらは意外と英語の曲ばかりで驚く。多くが海外の有名アーティストだ。アラビア語の曲名やアーティストもあるものの、割合は低い。

トップ100:インド

古くから独自の音楽理論が発達し、シタールやタブラといった伝統楽器で奏でられるエキゾチックなサウンドがインド音楽の典型的なイメージだが、ヒットチャートを見るとグルーバルチャートの上位の曲も多く見られる。
これは公用語として英語の話者が多いことも関係している。

それでもボリウッド(インド・ムンバイの映画産業)音楽や、インディアン・ポップといったジャンルの音楽も多く聴かれているようで、そうした楽曲では伝統楽器やエキゾチックなメロディーが現代的なサウンドと混じり合った面白い音楽を聴くことができる。

トップ100:カーボベルデ

ヨーロッパ、アフリカ、南米の文化が混在したような独特のクレオール文化をもつ大西洋の島国カーボベルデの音楽チャートも面白い。
現地にゆかりを持つアーティストの作品のほか、アフリカのヒット曲、英語圏のヒット曲、ラテン圏のヒット曲などが混ざり合い、多様な音楽が幅広く聴かれている様子が伺える。

トップ100:ナイジェリア

アフリカの音楽シーンを知るのに手っ取り早いのは、ナイジェリア、ガーナといった西アフリカ諸国のチャートだ。現地のアーティストの作品が多く聴かれており、ヒップホップやR&Bとアフリカ独特の音楽性が融合した興味深い音源を多数聴くことができる。

トップ100:インドネシア

中国、インド、アメリカに続く世界4位の人口を抱えるインドネシア。公用語はインドネシア語だが、他にもジャワ語、スンダ語、バリ語など多数の言語が話されており、英語は第二、もしくは第三の言語だが、ランキングは英語圏のヒット曲がほとんどを占め、現地のアーティストらしきものは少ない。

トップ100:韓国

お隣の国、韓国のランキングは現地のアーティストによる「K-Pop」のほか、英語圏のヒット曲も多く聴かれているようだ。
海外での流行に敏感なあたりが、K-Popのレベルの高さの所以なのだろうと思う。

トップ100:日本

日本のヒットチャートは独特だ。他国ではまずヒットチャートに入ってくることはないエイトビートのロック調の音楽(J-Pop)がランキングを占めている。また、各国のランキングがほぼ1年以内にリリースされた新曲で占められているのに対し、日本のトップ100には5年前くらいまでの曲がごく普通にランクインしてきているのも興味深い。この特徴的な傾向はおそらく、カラオケ文化が根付いていることに起因しているように思う。

その一方でグローバルのTOP100に入るような海外の楽曲は稀にランクインしているものの、その割合は非常に低い。

世界の最新ヒットチャートを活用して、新しい音楽に出会おう。

Apple Music の「トップ100」では、ここで紹介した国以外にも世界100ヶ国以上のランキングを毎日更新で見ることができる(ロシア、中国、キューバなど、ランキングが見られない国もある)。

気になる国があれば、iTunesやiPhoneのミュージックアプリを立ち上げ、「見つける」タブから「デイリートップ100」をチェックしてみよう。世界中の音楽とのワクワクするような新しい出会いが待っているはずだ。

それにしても、こんなに簡単に世界の遠い国で流行っている曲を聴けるなんて、なんて幸せな時代だろうと思う。

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