驚異のマルチ・インストゥルメンタリスト、カロル・パネッシ
作編曲にヴァイオリン、フリューゲルホルン、ピアノ、さらには歌もこなすブラジルの才女カロル・パネッシ(Carol Panesi)の2nd『Em Expansão』は、サンバ、フォホー、フレーヴォ、ショーロといったブラジルの伝統音楽を贅沢にブレンドした最高オブ最高なジャズ作品だ。
とにかく彼女のマルチ・インストゥルメンタリストぶりが凄い。いくら演奏に用いる音楽理論が共通とはいえ、構造の全く異なるピアノ、ヴァイオリン、フリューゲルホルンといった楽器をそれぞれアドリブも含めて完璧に弾きこなす姿は嫉妬を覚えるほど。
しかも美人だというから抗いようがない。
アルバムはヴァイオリンというよりハベッカ(ブラジル土着のヴァイオリン)風な演奏が魅力的な(1)「Transmutação Violeta」で幕を開ける。どこかアイリッシュな雰囲気もあり面白い。
収録された12曲は全てカロル・パネッシ自身の作曲で、ブラジル音楽とジャズの即興演奏のバランス感覚が絶妙。ボサノヴァが好きな方は(12)「Afeto」をおすすめしたい。
既に“新人”の域を超えた驚異的なアーティスト
カロル・パネッシはリオ・デ・ジャネイロの出身、在住。
2018年のデビュー作『Primeiras Impressões』ではブラジル音楽の神様的存在エルメート・パスコアル(Hermeto Pascoal)ともがっつり共演するなど、既に新人レベルの域を遥かに超えた存在感を放つアーティストだ。
彼女が最初に習った楽器はピアノで、そのきっかけは父が弾き語るジョビンの音楽だったという。11歳で音楽院に入学しヴァイオリンを専攻。エルメート・パスコアルのバンドのベーシストで、ワークショップを主宰するイチベレ・ズヴァルギ(Itiberé Zwarg)の楽団イチベレ・オルケストラ・ファミリア(Itibere Orquestra Familia)に13年在籍し経験を積んできた。
このプロフィールを見るとなるほど、エルメート・パスコアルの才能の片鱗が彼女の音楽からも見て取れるのも納得する。
2018年にはプロフェッショナル・ミュージック・アワードとMIMOインストゥルメンタル・アワードを受賞。名実ともにブラジル音楽の伝統とこれからの進化を担っていくアーティストだ。
Carol Panesi – violin, flugelhorn, piano, vocals
Guegué Medeiros – drums
Jackson Silva – bass
Fábio Leal – guitar