ボサノヴァの名曲「想いあふれて」が中東音楽に!?スパイス効き過ぎイスラエル男女デュオが斬新で素敵

Irit Dekel & Eldad Zitrin - Last of Songs

ボサノヴァの名曲「シェガ・ジ・サウダージ」の中東風アレンジが新鮮!

ブラジル音楽やボサノヴァが好きな方ならよくご存知の、いや、ボサノヴァに詳しくなくてもこの有名な曲は一度くらいは聴いたことはあるだろう。
原題シェガ・ジ・サウダージ(Chega de Saudade)、英語詞ではノー・モア・ブルース(No More Blues)、日本語名では「想いあふれて」の曲名で知られているアントニオ・カルロス・ジョビン作の名曲。1958年にジョアン・ジルベルトによって録音されたこの曲は“ボサノヴァ第一号”なんて言われていて、何度聴いてもその絶妙な美しさを持つメロディーやハーモニーに感服する名曲中の名曲だ。

たまたまYouTubeでイスラエルの音楽家が「No More Blues」という曲をやっているのを見つけて、あまりボサノヴァをやりそうな人ではなかったので同名の違う曲かなと思って聴いてみたら、アコーディオンによるエキゾチックなイントロに導かれたこの曲は、紛れもなくジョビンのそれだった。

こんな「Chega de Saudade」は初めて聴いた!

ボサノヴァの美しいメロディーはそのままなんだけど、バックの演奏や旋律はクセの強い中東音楽。あまりにその主張が激しくて、もはやこれがボサノヴァであったことさえ忘れて聴き入ってしまった。
もともとあった素材にスパイスをかけ過ぎたらなんか違う料理になってしまった、けどめっちゃ美味しい!そんな感じである。

下がその斬新すぎる「想いあふれて」のカヴァーのMVである。

A.C.ジョビンの名作「Chega de Saudade(想いあふれて)」の中東風味なアレンジが超新鮮!
(2)「No More Blues」のMV。

演奏はイスラエルの男女デュオ『Irit Dekel & Eldad Zitrin』

この斬新な「想いあふれて」が収録されているのはイスラエルの歌手イリット・デケル(Irit Dekel)と、マルチ奏者エルダッド・ツィトリン(Eldad Zitrin)によるデュオアルバム『Last of Songs』(2015年)。

アルバムはアメリカ合衆国でヒットした曲のカヴァーで構成されていて、(2)「No More Blues」以外にもビリー・ホリデイが歌った(3)「You’re My Thrill」、古いスタンダード曲(6)「You Don’t Know What Love Is」、(7)「Guess Who I Saw Today My Dear」、(11)「Skylark」といった楽曲をいずれも中東の民族楽器を用いるなど異色のアレンジで演奏。かといって民族音楽特有の野暮さは全くなく、エレクトロニックも駆使した原題的で洗練されたアレンジがとても印象的だ。初めてジャズを聴きたい方に最初におすすめできるジャズスタンダード集ではないかもしれないが、ある程度ジャズを聴いてきた方なら間違いなく新鮮な感覚で楽しめる作品だと思う。

ジャズスタンダードとして知られる(6)「You Don’t Know What Love Is」も中東風に。
アマンダ・マクブルーム(Amanda McBroom)の代表曲である(9)「Rose」のMV。
ヴィデオには登場しないが、カマンチェ奏者のマーク・エリヤウ(Mark Eliahu)がゲスト参加している。

個性際立つデュオ、二人のプロフィール

シンガーのイリット・デケル(Irit Dekel)はイスラエルの都市ハイファの出身で、現在はテルアビブで活動中。音楽と舞台芸術に憧れ、幼少期から合唱団で歌ったりフルートやピアノを演奏していた。名門の舞台芸術学校「Beit Zvi」を卒業したあとも音楽への情熱を絶やさず、クラシックやジャズ、ミュージカル、セファルディの音楽などを研究している。2018年には中東音楽のエッセンスが散りばめられたアダルト・コンテンポラリー作品『Hello』をリリースしている。

エルダッド・ツィトリン(Eldad Zitrin)は1980年、イスラエル・テルアビブの生まれ。鍵盤楽器、ギターやベース、サックスなどの管楽器、ドラムスやパーカッションなどの打楽器を全て一人で演奏するワンマンバンドのスタイルで知られており、近年はループマシンも駆使して完成度の高い作品をリアルタイムで構築する映像なども発表している。

UKのエレクトロユニット、クリーン・バンディット(Clean Bandit)のヒット曲「Rather Be」のカヴァーをループマシンを駆使した演奏で披露するエルダッド・ツィトリン

アルバムには二人の他にも多数のミュージシャンが参加している。
タジキスタンの音楽とユダヤ人の音楽に深いルーツを持つ家族バンド、Alaev Family や、アゼルバイジャンでケマンチェを学んだマーク・エリヤウ(Mark Eliyahu)、イスラエルを代表するパーカッション奏者のイタマール・ドアリ(Itamar Doari)らの参加は特筆すべきところだろう。

Irit Dekel – lead vocals, backing vocals
Eldad Zitrin – music production & arrangements, lead vocal (11), backing vocals, piano, Rhodes, accordion (1,2,4,6,8,12), acoustic guitar (10,11), programing, synths

Gilad Shmueli – drums
Yochai Cohen – percussion (1,2,3,4,6,8,10,11)
Itamar Doari – percussion (7,9)
Nir Maimon – programing & synths, (1,3,8) electric bass (8)
Amitai Parienta – electric bass (1,3), upright bass, (10,11), dobro guitar (11)
Gilad Ephrat – contrabass (1,2,4,6,8)
Omri Agmon – electric guitar (1,3,4,8,11), acoustic guitar (8)
Eyal Heller – acoustic guitar (5,11), charango & classic guitar (6)
Dudu Tassa – additional arrangements (3), acoustic guitar (3,11)

Alaev Family :
Alo Alaev – vocals (3), percussion (2,8)
Ariel Alaev – accordion (2,4,8), percussion (2,8)
Zvika Alaev – percussion (2)
Amir Alaev – kanoon (2,3,4,8,10), percussion (2,8)
Aviva Alaev – arab violin (2,3,6,8)

Chen Shenhar, Nitzan kanety, Galia Hai, Moshe Aharonov – violin & viola
Maya Belzitsman – cello
Shachar Ziv – French horn (1,4,10,11)
Eyal Sela – turkish clarinet (3), clarinet (6), bansuri (3,4,8), ney (4,8), flute (8)
Mark Eliyahu – kamanche (4,7,8,9,10), saz (8)

Irit Dekel & Eldad Zitrin - Last of Songs
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