ハニャ・ラニ、さらに魅力を増した2ndアルバム
ポーランド出身の人気ピアニスト/作曲家ハニャ・ラニ(Hania Rani)。彼女の新譜『Home』では、これまでのポストクラシカルなピアノと、アンビエントな音響効果に加え、初めて自身のヴォーカルをフィーチュアした曲が数曲収録されており新たな魅力を見せた。いくつかの曲にはポーランドのピアノトリオ、イモータル・オニオン(Immortal Onion)のベーシスト(Ziemowit Klimek)とドラマー(Wojtek Warmijak)も参加し、前作『Esja』と比較しても圧倒的に表現力を増した内容になっている。
前作で絶賛された強弱を丁寧に表現した水面のきらめきのようなピアノは今作にも引き継がれ、さらに彼女のヴォーカルやエレクトロニカといった要素が加わった今作には“音楽の力”がある。(11)「I’ll Never Find Your Soul」や(13)「Come Back Home」でみられるように、ヴォーカルもただピアノに乗せて歌うだけではなく、幾重にも自身の声を重ねたり、ヴォコーダーを使ったりと彼女の好奇心と創造力を反映したものになっていて素晴らしい。
個人的には前作『Esja』はBGMとして聴き流すには良いものの、集中して音楽を聴くという点では物足りない印象だったが、今作では歌が加わることで“聴く”ことができるようになった。現代音楽的なアンビエント〜ポストクラシカルの音楽家は、歌を加えることでより多くの大衆に届くものを創ることができるということを彼女は証明したように思う。
ハニャ・ラニ(Hania Rani)は1990年生まれ。ポーランド最大の港湾都市グダニスクに生まれ、自宅のあるワルシャワと留学先のベルリンを往復しながら活動している。
2019年にソロピアノ作『Esja』をリリースすると欧州を中心にたちまち話題となり、ポーランド版グラミー賞と呼ばれる「Fryderyki」で5部門でノミネートされ、エンピックチェーンのベストセラー賞「Discovery of the Year 2019」を受賞したほか、ポーランドのジャーナリストが選ぶ「ポーランド音楽の最も注目すべきニューフェイス」に贈られる名誉あるサンキ賞を受賞するなど、国際的に高い評価を得てきた。
同年末には注目のピアニストが集うコンサート「ザ・ピアノエラ2019」で来日公演も行っている。