カタルーニャのヴァイオリン奏者、待望のソロデビュー作
2000年以降、30枚以上のアルバムの録音に参加してきたスペイン・バルセロナのヴァイオリスト、コロマ・ベルトラン(Coloma Bertran)がその長いキャリアの中で初となるソロアルバム『Nocturns I Diamants』をリリースした。本作ではコロマ・ベルトランが一人でヴァイオリン、ヴィオラ、オクターヴ・ヴァイオリンを様々な奏法を駆使し多重録音し、曲によってはゲストシンガーを迎えるという構成をとっている。
アルバムはシンプルな清廉さに心が洗われるような(1)「Obertura」で幕を開ける。
クラシック、ジャズ、ポップスに横串を刺して活躍する彼女らしく、ピチカート(指弾き)やアルコ(弓弾き)、さらには楽器のボディをパーカッションのように叩くといった奏法で作りあげられたヴァイオリンの音楽は深く豊かでありながらも馴染みやすい一面も。
収録曲はほとんどがオリジナルだが、唯一(8)「Homenatge a Teresa」はノヴァカンソ運動(*)の第一人者であり、カタルーニャを代表するシンガーソングライター/俳優のオヴィディ・モントロール(Ovidi Montllor, 1942年 – 1996年)の名曲のカヴァーとなっている。
*ノヴァカンソ運動(La Nova Cançó)…1950年代後半より興った、それまでスペイン国内で抑圧されてきたカタルーニャ語やその文化の復興運動で、1960年代の同地域の多くのバンドや歌手がこの傾向を取り入れ社会に影響を与えた。カタルーニャ民族主義の高まりの発端のひとつともいえ、現在も続くカタルーニャの独立運動につながっていると思われる。
多数の歌手がゲストで参加
今作には計7人ものゲストシンガーが参加しており、それぞれ違った個性が聴けるのも嬉しい。
(2)「Avui Que el Sol Ens Ha Sorprès Ben Alt」にはメタルバンド、Segle XIII のヴォーカル/ギタリストのアルナウ・トルデラ(Arnau Tordera)が参加。クラシックの素養も持つ彼らしい甘さとテクニックを兼ね備えた歌唱が印象的。
(6)「Cançó de Bressol Per Anar Als Contes」はカルレス・ベルダ(Carles Belda)が歌唱で参加。彼のワイルドな声も他のゲスト歌手とは違った味がありとても良い。
ラストを飾る(13)「Cançó de Bressol」はカタルーニャ随一の実力派歌手ジェンマ・ウメット(Gemma Humet)がその可憐な歌声を披露してくれる。
インスト曲でも(5)「Improvisació Núm. 1 en Re Menor」は一聴して分かりやすく美しい曲と演奏でおすすめだ。
ヴァイオリンや擦弦楽器の音色が好きな方、スペイン(特にカタルーニャ)の音楽や文化に興味がある方、素敵な現代クラシック/ジャズを聴きたい方におすすめできる素晴らしいアルバム。
Coloma Bertran – violin, viola, octave violin
Arnau Tordera – vocal (2)
Ju – vocal (4)
Carles Belda – vocal (6)
Sanjosex – vocal (8)
Guillem Soler – vocal (11)
Dia Sañé – vocal (11)
Gemma Humet – vocal (13)