ファビアーノ・ド・ナシメント、豊穣な大地の香りのギター音楽

Fabiano do Nascimento - Prelúdio

洗練とプリミティヴが同居する魅惑の音

ブラジルの豊かな自然にインスパイアされたギターからは、豊穣な大地の香りが漂う。
ブラジルのギタリスト、ファビアーノ・ド・ナシメント(Fabiano do Nascimento)『Prelúdio』(2020年)は、バーデン・パウエル直系のテクニカルかつ豊かな音楽性のギターをたっぷりと楽しめる傑作だ。

今作は長年の音楽のパートナーであるドラムス&パーカッションのヒカルド・ティキ・パシージャス(Ricardo “Tiki” Pasillas)とのデュオで、“現代ブラジル音楽の原風景”とも呼びたくなる洗練とプリミティヴの同居したような、なんとも形容しがたい音楽が全編にわたって流れてゆく。録音もどことなく昔のサウンド・エンジニアリングのような味わいがあり、懐かしささえ感じてしまう。

リズムやグルーヴを重視した(2)「Partiu」、(5)「Tributo」など、人間が音楽に求める本能的な欲求が満たされるような素晴らしい快演だ。

(8)「Prelúdio Amazónico」のMV。
素朴なメロディーが美しい。

ファビアーノ・ド・ナシメントは1983年、ブラジル・リオデジャネイロの音楽家の家系に生まれた。彼の曽祖父にあたるラダリオ・テイシェイラ(Ladário Teixeira)は20世紀初頭に活躍したサックス奏者。

幼少時からピアノと音楽理論を学んだが、10歳頃ギターを手に取り、以降その楽器に専念、独学で習得してきた。リオで数年間育ったあと、サンパウロに移住。2001年には米国カリフォルニアに移住し音楽の幅を広げつつ、同時に自国ブラジルの音楽文化をより深く研究するようになったという。
彼のギターはサンバやジャズを基調としたスタイルの作曲と演奏が特徴的だが、土着的な空気感が濃い。ギターとパーカッション、そして僅かながらも効果的なヴォイスで構成された本作は彼の魅力が存分に発揮されている。

Fabiano Do Nascimento – guitars, vocal
Ricardo “Tiki” Pasillas – drums, percussion

Fabiano do Nascimento - Prelúdio
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