半世紀の時を経て蘇るノヴォス・バイアーノス名盤『Acabou Chorare』
ブラジル音楽史上の最高傑作※のひとつに挙げられるノヴォス・バイアーノス(Os Novos Baianos)の名盤『Acabou Chorare』(1972年)が、約半世紀の時を経て再解釈された。
曲順もオリジナルと同一に再現された「Replay」プロジェクトによる『Acabou Chorare』は、10組のアーティストが参加。それぞれの個性を持ち寄って、名曲の数々を鮮やかに蘇らせている。
※『ローリング・ストーン・ブラジル』誌が2007年に「ブラジル音楽の最高の100枚」で第1位にノヴォス・バイアーノスの『Acabou Chorare』を選出している。
(1)「Brasil Pandeiro」はサンパウロの人気バンド、フランシスコ・エル・オンブレ(Francisco, el Hombre)が演奏。サンバの作曲家アシス・ヴァレンチ原作のこの曲を、新鮮なサイケロック風エレクトリック・ギターとサンバのリズム、そして特徴的な男女ヴォーカルでカヴァーしたノヴォス・バイアーノスのオリジナルを踏襲したアレンジで、永遠の名曲を再認識できる好カヴァーだ。
ミナス・ジェライスのレゲエ(ヘギ)バンドの Onze:20 は(2)「Preta Pretinha」をカヴァー。ノヴォス・バイアーノス×レゲエは不意打ちだったが、これが中々違和感なく溶け込んでいて面白い。
(5)「Acabou Chorare」は現代ブラジル音楽を代表するSSWマリア・ガドゥ(Maria Gadú)が担当。
続く(6)「Mistério do Planeta」はSSW/ギタリスト/アコーディオン奏者のマルセロ・ジェネッシ(Marcelo Jeneci)によるカヴァー。
(7)「A Menina Dança」はネオソウル系歌手シェニア・フランサ(Xênia França)が担当しており、かなりのリハーモナイズ(コードの置き換え)が施されているため、原曲に慣れていると最初は違和感を覚えるが、リズムもコードも凝ったアレンジで相当にかっこいい。
バイーアのバンド、アフロシダージ(Afrocidade)による(9)「Um Bilhete pra Didi」はなぜか中東風の旋律が聴こえたりしてこんな曲あったかな?と思わせられた斬新なアレンジ。思わず原曲を聴き比べてしまった。
名曲はいつまでも色褪せない
ノヴォス・バイアーノスと言えば、そのほとんどの楽曲を書き、歌った中心人物であったギタリスト/SSWのモラエス・モレイラ(Moraes Moreira)が2020年4月に心臓発作で急逝し、ブラジルは悲しみに暮れた。今作はあらためて彼の功績を振り返り、追悼する意味も込められている。
素晴らしい音楽が生まれて、多くの人が感動し、そして演奏し、歌う。
その音楽が生まれた時代に熱狂した人も、オリジナルを知らない人も、いつかどこかでその価値に気付き、友人や次の世代に伝えていく。
こうして音楽はいつまでも歌い継がれていくのだ。
今回の「Replay Acabou Chorare」プロジェクトでは、『Acabou Chorare』の収録曲を演奏、そのビデオを送信すると、上位3名に特製のLPをプレゼントするという企画も行っているようだ。