イスラエルのギタリスト、ダニエル・ウェイス(Daniel Weiss)による“アーティストの旅と探索”をテーマとした連載企画。
第3回は「プラクティス・ルーティーンについて」。
卓越したギタリストの“練習”に対する姿勢をたっぷりと語っていただきました。
アーティストの旅と探索 vol.3 〜プラクティス・ルーティーンについて〜
── 完璧なプラクティス・ルーティーンは存在すると思いますか?
Daniel Weiss わかりません。きっとないと思います…でもいい練習はあります。
── いい練習とはなんでしょう?
Daniel Weiss いい練習とは現在の目標に向かって確実に上達ができる練習のことです。
上達したいと思っている演奏家全員がどうすれば効率的な練習ができるか疑問に思っていると思います。
今日は練習の仕方について話しましょう。せっかくなので、僕がギターを始めた頃にさかのぼって話を始めましょう!
ギターを始めてすぐの頃
Daniel Weiss 私がギターを始めた頃、プラクティス・ルーティーンはありませんでした。
その時は毎日自分の好きな音楽や音楽家たちをトランスクライブして彼らの真似をするのに必死でした。毎日毎日朝起きてすぐ、自分に影響を与えたスタイルやサウンドに深く深く入り込み自分のものにしようとしていました。絶え間なくインスピレーションを受けていたおかげで知らないうちに継続性が身についていました。
── やる気が出ない時や、好きな音楽が見つからない時はありませんでしたか?
Daniel Weiss 新しいものを学びたいという衝動がとても強く、その頃はモチベーションやルーティーンについて考えたこともありませんでした。
今でもギターを練習した人生の一瞬一瞬をとっても大切に感じています。このすばらしい楽器が私にくれた長い長い道には感謝してもしきれません。
── 本当にギターが好きだったんですね!では現在はどんな練習をしていますか?
現在
Daniel Weiss 最近は“バード”(チャーリー・パーカー)をもう一度トランスクライブしてビバップを学び直しています。そしてバッハの美しい曲を学び、一音一音正確なアーティキュレーションで鳴らせるように練習しています。
常にアーティキュレーションに注意を払ってきたつもりでしたが、最近は特にこれに集中しています。
── では、どのように練習のスケジュールを立てていますか?
Daniel Weiss 私は練習全体ををいくつかの部分に分けて考えています 。
まず最初に現在メインで練習していることを最低1時間行います。
その後、他の目標に向かって15分から30分ほどの練習を行います。
僕たちはそれぞれが独自のユニークな練習方法を持っていますが、それでも結局は音楽の練習をしていることを忘れないでください。
単調なスケールはバッハにかかれば美しいソナタになり、つまらないアルペジオもチャーリー・パーカーが弾けばクールなビバップラインに変わります。
── 練習の中で気をつけていることは?
Daniel Weiss 現在は
・頭の中で目標をはっきりさせること
・将来の自分のイメージをしっかりと持つこと
・できるまで粘り続けること
・難しい目標はいくつかの小さな目標に切り分けて考える
・音一つ一つの正確さを意識する
・常に集中する
です。
…練習について話してるだけでギターを手にとって練習したくなってきました!!
── 練習をしていない時はどんな感じですか?
Daniel Weiss 不安になりますよね。
まるで水を与えられてない植物のように感じます… 数日連続で練習をしないと何か変な感じがしてきます。
ハングリーに、忍耐強く
Daniel Weiss どんな音楽だろうと僕はそれを演奏する時スケール、アルペジオ、シングルノートの一音一音に全力を注ぎます。
正確なアーティキュレーションで演奏されたシングルノートはあなた自身を表現する一音となりえます。
楽器が出す音を深く理解し、響に耳を傾けることが音楽を深く理解することにつながります。
昔のお坊さんが言った言葉にこういったものがあるそうです:
何かを急いで習得したい時
もし一日に2時間練習をするなら、習得には2年かかるだろう
もし一日に5時間練習をするなら、習得には5年かかるだろう
もし一日に10時間練習をするなら、あなたはそれを一生習得しないだろう。
急いでいる時、あなたの頭は現在ではなく未来に目を向けています。
どれだけ練習しようと現在のあなたについて理解しようとしなければ上達は難しいと思います。
(次回に続く)
Image by: Eran Shaysh
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ダニエル・ウェイス(Daniel Weiss)略歴
イスラエル・テルアビブ出身、バークリー音楽大学卒業の作曲家/ギタリスト。
英Lick Library主宰のギターコンテスト、ギター・アイドル2016(Guitar Idol 2016)のファイナリスト。
2016年にベーシストのリオール・オゼリ、ドラマーのシャロン・ペトロヴェル(Pinhas & Sons)とともにプログレッシヴ・ジャズバンド、Square to Checkを結成。2016年にEP『Stir Fry』を、2018年にシングル『Orchestrated』をリリース。
2021年にピアニスト/作曲家のヤニフ・タウベンハウス(Yaniv Taubenhouse)らを迎え初のリーダー作『Dive』をリリースしている。