真のゲームとは?
それは心が楽しむゲーム、汝が楽しむゲームである。
それこそが汝が勝利するゲームなのだ。
──マハラジ
アーティストの旅と探索 vol.4 〜音楽のインナーゲーム〜
── ダニエルさんはライヴをする時、いまだに緊張をしますか?
Daniel Weiss 私はあまり緊張などについて考えたことがありません。
いつも生徒が私に「なんで家では上手に弾けるのに、ライヴになると緊張して弾けなくなるんだろう」と聞きますが、私自身はライヴでの方がうまく弾けている気がします。
例えば人と会話をすると、自分一人では決して口から出てこない言葉が出てきたりしますよね?
それと同様に、人と一緒に演奏するということ、人に音楽を聴いてもらうということはお互いに影響を与えあって、どんどん新しい世界が広がっていくということだと思います。
それを頭において、緊張することよりも観客と一緒にどんな音楽を作り出していくかについて考えるといいと思いますよ。
── それはいいアイデアですね!観客を利用するのはとても面白い考えだと思います。自分が楽しまないと他の人も楽しめませんよね。
Daniel Weiss 楽しむということについて思い出したことがあります。
2007年の4月、イスラエルのラアナナのある友達の家で夜通しセッションをしていました。
少し寝たあと私たちは車に楽器を詰め込み、近所で一番大きくて賑やかな公園に行き、ギターをアンプに繋ぎ、若さと創造性を爆発させていました。
私はいつもこのような情熱的な瞬間を大切にしています。
どんなに練習を頑張っても結局一番上手に表現ができた瞬間はこういった100%楽しんでいる時だと思います。
── やっぱり音楽は楽しむものですからね。どうすれば自然に観客の前で楽しむことができますか?
Daniel Weiss 音楽やスポーツ関係なく、ある物事を意識はしているけど、それについて考えすぎていない状態を想像してみてください。
どんなスポーツも楽器も、最初は正しい動きを意識しないとうまく行きませんよね?でも体が慣れてくると考えなくても意識をすればできるようになります。
これが、集中はしているけれど完全にリラックスをしている状態です。
生徒とテクニックについて勉強をしている時、手の運動の形や力学や技術について説明しすぎると、驚いたことに生徒の手は緊張で固まってしまい、力の正しい流れが失われてしまうことが多いのです。この現象に解決策はあるのかと長い間考えていましたが、下に書いた五つの方法を実践することで大幅な改善が見えました。
1. 生徒にたっぷり時間を与え、生徒自身と私がどうやって体を動かしているかを観察させる
2. ゆっくりとフレーズを繰り返させ、一音一音がクリアに聞こえるように練習する
3. 弾いた内容を口でも歌えるようにする
4. 彼らが想像したことを弾けるように練習させる
5. 教えている時に自分も生徒だったことを忘れず、自分の声のトーンや解説について気をつける
── 自分で練習している時、どうすればリラックスしながら集中できますか?
Daniel Weiss まず、よく休憩をとります。休憩も込みで練習スケジュールを立てています。
個人的には黙想が特に役に立っていて、練習することを頭で考え手を通してアンプから出るようにイメージしています。また自分のヒーローたちの演奏している動画を見ながら、彼らの使用しているアイデアを取り入れたり、彼らの音楽を作り出している全ての要素に注目してみます。
── 確かに、休憩や瞑想について真剣に考えている人はあまりいませんね。勉強になります。
Daniel Weiss さらに言えば、私は自分の練習時間の中で実際に演奏時間が長くなるように心がけています。
もしライヴでパフォーマンスをする予定があるのなら、そのライヴで演奏するものに関しては完璧にしたいです。ところどころ微妙なところがある状態でステージには立ちたくないですね。
作り出す喜びというのは他のところではなかなか味わえないものだと思っています。
曲の流れの中で即興をしている人が流れを生み出し、それを進化させ、絶え間ない創造の連続を生み出しているのは、人々に特別な感情を呼び起こします。
どうやってそんなレベルにたどり着けるのか?
この質問が私の即興演奏とジャズへの愛を日々高めてくれます。
皆さんの音楽がより豊かで楽しいものになるように、イスラエルから祈っています!
ダニエル・ウェイス(Daniel Weiss)略歴
イスラエル・テルアビブ出身、バークリー音楽大学卒業の作曲家/ギタリスト。
英Lick Library主宰のギターコンテスト、ギター・アイドル2016(Guitar Idol 2016)のファイナリスト。
2016年にベーシストのリオール・オゼリ、ドラマーのシャロン・ペトロヴェル(Pinhas & Sons)とともにプログレッシヴ・ジャズバンド、Square to Checkを結成。2016年にEP『Stir Fry』を、2018年にシングル『Orchestrated』をリリース。
2021年にピアニスト/作曲家のヤニフ・タウベンハウス(Yaniv Taubenhouse)らを迎え初のリーダー作『Dive』をリリースしている。