デンマークの歌手リリー、ギラッド・ヘクセルマンとの親密なアメリカン歌曲集

Lilly - The Song is You

静かで親密なヴォーカル&ギターのJAZZ

デンマークのジャズシンガー、リリー(Lilly)が、イスラエルのギター奏者ギラッド・ヘクセルマン(Gilad Hekselman)と米国のコルネット奏者カーク・クナフキ(Kirk Knuffke)と共に録音した極上のアメリカン・ソングブック『The Song is You』をリリースした。リリーとギラッド・ヘクセルマンは2017年に『Tenderly』で共演しているので、今作はその続編という位置付けになる。

今作でのリリーの重要なパートナーであるギラッド・ヘクセルマンの演奏は(1)「If You Could See Me Now」ではガットギター(ナイロン弦)でぴったりとリリーの歌に寄り添うように、(3)「My Foolish Heart」ではフォークギター(スティール弦)でブルージーに、(4)「Five Wild Geese」ではエレキギターに空間系エフェクターをたっぷりと噛ませたりと、曲ごとにさまざまに変化する表情を見せる。

カーク・クナフキ(カーク・クヌフク、カーク・ナフクなどとも表記されるが、本人の発音を聞いてみると「カーク・クナフキ」が近い)は(1)「If You Could See Me Now」を除く全ての曲でコルネットを吹いている。この作品でトランペットではなくより丸い音色のするコルネット奏者を選んだのは正解に思える。リリーのシルクのような声にトランペットは金属的すぎるだろうが、カーク・クナフキによるコルネットの即興演奏はリリーの歌声との対比や競合ではなく、調和をもたらす。

どの曲もアレンジが凝っており、技術の劣るミュージシャンがデュオなどの小編成でやったときにありがちな単調さや物足りなさは一切ない。原曲のコードはアレンジの時点で豊かなリハーモナイズが施され、さらに高度なソロも織り交ぜたギラッド・ヘクセルマンのギターは見事と言うしかないし、イギリスの古いバラッドでサイモン&ガーファンクルの歌唱で有名な(7)「Scarborough Fair」は9/8拍子で印象的なベースラインを反復するなど斬新さも垣間見せる。

リリーの2021年作『The Song is You』のEPK

Lilly – vocal
Gilad Hekselman – guitars, percussion (4) & bodypercussion (2 & 4)
Kirk Knuffke – cornet

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