鬼才ギタリスト/ロテム・シヴァン、NYジャズの精鋭たちと作り上げた創造的な新譜

Rotem Sivan - Far From Shore

ロテム・シヴァン、NYジャズ精鋭たちを迎えた創造的な新譜

イスラエル出身のギタリスト、ロテム・シヴァン(Rotem Sivan)の新作『Far From Shore』は、ゲストにアーサー・ムーン(Arthur Moon)、ブラクストン・クック(Braxton Cook)、タナ・アレクサ(Thana Alexa)、BIGYUKIなどニューヨークで活躍する若手アーティストたちを迎え、彼の本格的なアルバムとしては初となる「歌」にフォーカスしR&Bやネオソウル色を強めた作品になっている。

スローテンポの曲が多く、ロテム・シヴァンのギターも空間に溶け込むようなドリーミーな音色。近年は個性的で奇抜なギタリストという印象の強い彼だが、柔らかなタッチから繰り出されるサウンドはどこまでも丁寧で、様々なエフェクターを駆使したソロもギターへの強い愛情が伝わってくる素晴らしいもの。時折見せる斬新な閃きのフレーズも楽しいが、それだけに終始せずヴォーカルとのバランスや絡み方も良く、とても聴きやすい。さまざまなジャンルを飲み込み拡大し続けるジャズという音楽の最前線とも言うべき心地よい。

カイル・マケボイ(Kyle McEvoy)作の抹茶をテーマにした(4)「Matcha」を除き、全曲がロテム・シヴァンの作曲またはゲストとの共作。デビュー当初の“優れた新鋭コンテンポラリージャズ・ギタリスト”、近年の“ちょっとクレイジーなジャズギタリスト”、そして今作では新たに“ソングライター”としてクリエイションの幅を大きく広げてきた印象だ。

カミラ(Kamilah)が歌う(4)「Matcha」。半音進行も巧みなヴォーカルのメロディー、甘い音色のギターソロ、ゆったりとグルーヴィなリズム…どこをとっても最高!

普遍性と豊かな個性を併せ持つロテム・シヴァン 略歴

ロテム・シヴァンはイスラエルのテルアビブの音楽学校を卒業しクラシック作曲の学位を取得後、2008年に渡米しニューヨークでジャズを学び、2009年にはスイスのモントルー・ジャズ祭のインターナショナル・コンテストに入賞。2013年に『Enchanted Sun』でアルバムデビューし、ハガイ・コーエン・ミロ(Haggai Cohen-Milo)らと共演した2014年のセカンドアルバム『For Emotional Use Only』はダウンビート誌で星4.5を獲得するなど、高い評価を得てきた。

その後何枚かは聴きやすい良質なコンテンポラリージャズ作品を発表していたが、2018年作『My Favorite Monster』で大きく変貌。R&B、ヒップホップ、北インド音楽など他ジャンルからの影響も伺えるサウンドで飛躍を見せた。多くのフォロワーを抱えるInstagramYouTubeでも積極的に情報を発信。普遍性と個性を絶妙なバランスで併せ持ち、現代のジャズギターを一歩リードする存在となっている。

とろけるようなギターの音色に痺れる(7)「Far From Shore」。
アルバム収録版は男性歌手マイケル・ゴールドスタイン(Michael Goldstein)が歌っている。

Rotem Sivan – guitars, keyboards, bass, producer
Adam Neely – bass, synth
Jaylen Petinaud – drums
Tim Lefebvre – bass
Ray Angry – keyboards
BigYuki – keyboards
Itamar Gov Ari – keyboards
Mark Lettieri – guitar
Paul Davids – guitar
Josh Smith – guitar
Braxton Cook – saxophone
Arthur Moon – voice
Sophia Urista – voice
Kamila Gibson – voice
Michael Goldstein – voice
Pia Salvia – harp, voice
Thana Alexa – voice
Freakquencee – bars
Joanna Teters – voice
Antonie Katz – bass
Anwar Marshall – drums
Ulysses Owens Jr. – drums
James Muschler – drums

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