【連載】ネイティブ・タンの衝撃~①「ビート狂い」が世に送り出した、ストリート目線の“JAZZ”

「ニュースクール」の幕開けを高らかに宣言した伝説のクルー

HipHopにはクルーと呼ばれるチームが数多く存在する。
古くはマーリーマール(Marley Marl)率いるザ・ジュース・クルー(The Juice Crew)から、
ノトーリアス・B.I.G(Notorius B.I.G.)のジュニア・マフィア(Junior M.A.F.I.A)とトゥパック(2PAC)率いるアウトロウズ(Outlowz)は悲しい抗争を生み出した。
あのエミネム(Eminem)も元々はD12というクルーのメンバーであるし、最近ではドレイク(Drake)を輩出したヤングマニー(Young Money)も記憶に新しいところだ。
このようにHipHop史を語るうえで切り離すことの出来ない“クルー”の存在の中で一際異彩を放つのが、ネイティブ・タン(Native Tongue)である。

「ビート狂い」が世に送り出した、ストリート目線の“JAZZ”

本特集で真っ先に取り上げたいのが、このビートナッツ(Beatnuts)の歴史的クラシック『Street Level』(1994)。元々はラッパーではなくプロデューサーチームだったビートナッツが満を持して放った1stアルバムは、そのラップスキルはもちろんのこと、トラック使いも驚きに満ちたものだった。

(3)『Props Over Here』ではドナルド・バード&ブッカー・リトル(Donald Byrd & Booker Little)「Wee Tina」のベースラインを大胆にループ。しっかりスウィングさせつつ、サビでは”Yeah!you get props over here!”と上げてくれるのがビートナッツ流。

2:03~あたりのベースラインをループ。ドナルド・バード/ブッカー・リトルの名トランぺッター2人のリーダー曲で、あえてベースラインを使うあたりが憎い。

(8)『Let off a Couple』でもジャマイカ出身のジャズピアニスト、モンティ・アレクサンダー(Monty Alexander)の「Love and Happiness」のピアノを効果的に使い、1:44のinterlude的な立ち位置な楽曲をメロウに仕上げている。

0:53~からのフレーズをサンプリング。ピアノ部分だけサンプリングすることで、こんなにもメロウになるという好例。

続く(9)『Rik‘s Joint』では、マイナーながらヒューゴ・モンテネグロ(Hugo Montenegro)の「Again」をサンプリング。そこまで大々的に使われてはいないものの、前曲の流れをそのままにメロウに仕上げるストーリ性は、今までのオールドスクールには見られなかった特徴の一つではないだろうか。

冒頭の10数秒、メロディが入る前の数小節をループ。これはマニアック!

(12)『Get Funky』はビブラフォン奏者ロイ・エアーズ(Roy Ayers)の「Printed Dessert」のフレーズをピックアップ。落ち着いたトラックに熱量の高いラップが、楽曲の完成度と相まって、素晴らしい高揚感を生み出している。

1:06あたりのフレーズをサンプリング。ジャケットの通り万華鏡のように幻想的な原曲はこれだけでも必聴。

突如として生まれたHipHopとJazzのマリアージュ。HipHopの熱量をまだまだ色濃く残しつつもJazzの洗練さを取り入れた本作品は、Jazzの名曲とニュースクール黎明の雰囲気を冷凍保存した、まさに64分のタイムカプセルと言えるのではないだろうか。

ビートナッツはこの後、数作品を発表。

サンプリングネタの豊富さは健在ながらも、いずれもパーティチューン重視で本作のように野心溢れる作品はまだ現れていない。

プロフィール

元々トラックメイキング・プロデュースを行っていたジュジュ(JUJU)とサイコレス(Psycho Les)のビート・キングス(Beat Kings)が、メンバーにファッション(Fashion)を迎えデビューしたユニット。コモン(Common)やファットジョー(Fat Joe)といった錚々たる面々に楽曲提供をしながらも、「バカどもがダサいラップで俺たちのビートを台無しにする」との理由でデビューしたのは有名な話。ランDMC(RUN DMC)と同じ、ニューヨークはクイーンズ出身ながら、ジュジュはドミニカ、サイコレスはコロンビアにルーツを持つラテン系で、スペイン語がリリックに入り込むのも特徴。デビュー前のEP『Intoxicated Demons』収録の「Reign of the Tec」や、2ndアルバム『A Musical Massacre』収録で、Jeniffer.Lopez「Jenny from the Block」のヒットで話題となったイーノック・ライト(Enoch Light)の「Hi-Jack」サンプリング曲「Wacth Me Out」などが有名。なお、上記EPおよび本デビューアルバムのジャケットではハンク・モブレー(Hank Mobley)の『The Turn Around!』を拝借するなど、JAZZへのリスペクトが随所にみられる一方、リリックは攻撃的でオールドスクールスタイルに近い。

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