ファンク~ソウルで世界を救うハッピーヴァイブス
歌?楽器?カテゴリとしてはエフェクターであり、楽器の音をビニールチューブを通して演奏者の口に入れて響かせるというその衝撃的なビジュアルと、ホワホワしたその特徴的な音色が耳に残って離れない、トーキング・モジュレーター(通称:トークボックス)。ザップ(Zapp)および、そのフロントマンであるロジャー・トラウトマン(Roger Troutman)などのPファンクに愛された音というイメージだが、ロック界隈ではボン・ジョビ(BON JOVI)があの有名な「Livin’ on a Player」や「It’s My Life」で使っていたり、最近ではブルーノ・マーズ(Bruno Mars)が「24K Magic」で使用したことで再度注目を集めている。
そんなトークボックスを使い、近年良曲を量産し続けているのがスワトキンス(Swatkins)だ。
スワトキンスはLA出身のマルチ奏者・スティーブ・ワトキンス(Steve Watkins)のプロジェクト。
基本はキーボーディストであるが、自身のウェブサイトでも「トークボックスマスター」と名乗るように、トークボックスへの造詣の深さと思い入れは彼が携わる音楽からヒシヒシと伝わってくる。
元々、エクセレント・ジェントルマン(Excellent Gentleman)やジュノ・ホワット(Juno What?!)などのファンクアーティストの作品に参加していたスワトキンスが、本格的に自身の作品を発表し始めたのは2019年。自身のバンド・Swatkins & The Positive Agenda名義で発表したセルフタイトルEPは、ザップやロジャーといったPファンクというよりは、スティーヴィー・ワンダー(Stevie Wonder)のようなすべてを包み込むような優しいソウル作品として実に完成度の高いものだった。
そんな彼が2022年、活動を加速させている。
今年1月にはモーレア・マサ(Moorea Masa)をシンガーに迎えた「Lost & Alive」を、続く3月には同様に現代のスティーヴィー・ワンダーやマーヴィン・ゲイ(Marvin Gaye)とも評される若きSSW、アレン・ストーン(Allen Stone)を迎えた「More To Learn」をプロデュース。
いずれも西海岸らしいフィーリングとハッピー・ヴァイブスに包まれた素晴らしいソウル曲だ。
今世の中が混沌とする中、本当に人々を救うことが出来るのは、ただ一時でもこの現実を忘れさせてくれるこんな音楽なのかもしれない。