自然体でJAZZの未来へ進むHigh Pulp、高密度な新譜『Pursuit of Ends』

High Pulp - Pursuit of Ends

シアトル発ジャズ・コレクティヴ、High Pulp『Pursuit of Ends』

2017年に米国シアトルで誕生した次世代ジャズ・コレクティヴ、ハイ・パルプ(High Pulp)が放つ強力な新譜『Pursuit of Ends』。この数年でアヴァンギャルドなジャズからサイケ・ロック、プログレ、シューゲイザー、ファンク、ヒップホップ、エレクトロニカまであらゆるものを吸収しシーンの最前線に躍り出た彼らにしかできないであろう、完成度の高い作品だ。しかもこれでもまだ、発展途上を感じさせるポテンシャルも秘めるから末恐ろしい。

彼らの音の中心は間違いなくドラマーのボビー・グレンフェルト(Bobby Granfelt)だろう。一聴して解るように彼のドラムは極めて創造的かつ攻撃的だ。一瞬のうちにリズムを分解し、着地点に向けてスティックを振り下ろす。その回転速度は恐ろしいほど速いし、聴けば聴くほど「天才的だな」と思わせられる。

(2)「All Roads Lead to Los Angeles」にはサックス奏者ジャリール・ショウ(Jaleel Shaw)がゲスト参加。

楽曲の構成自体は“ループ的”ではある。しかしその上で展開されるアドリブやインタープレイの妙技など、エキサイティングなジャズの面白さを存分に感じられる傑作だ。

(9)「Wax Hands」にはファラオ・サンダースらとの共演で知られる女性ハープ奏者ブランディー・ヤンガー(Brandee Younger)が、そしてラストの(10)「You’ve Got to Pull It up from the Ground」には気鋭トランペット奏者シオ・クローカー(Theo Croker)が参加するなど、ゲストの話題にも事欠かない。

メンバーの多くはジャズのアカデミックな教育とは縁がなかったというHigh Pulp。モジュラーシンセで映画音楽やサウンドコラージュに情熱を注ぐ“マッドサイエンティスト”のアントワン・マーテル(Antoine Martel)、その場で素材を処理、分解し再構築する能力に長けたロブ・ホーマン(Rob Homan)、メタルやハードコア出身のベース奏者スコット・リクソン(Scott Rixon)、ファラオ・サンダースを信奉するベトナム系のマルチ管楽器奏者ヴィクトリー・グェン(Victory Nguyen)、“オールドスクールを21世紀に押し上げる”と評判のアルトサックス奏者アンドリュー・モリル(Andrew Morrill)。役者は既に揃っている。

High Pulp :
Bobby Granfelt – drums, auxiliary percussion
Rob Homan – Nord Stage 2, Moog Sub 37, Sequential Prophet-6, grand piano, Hammond Organ
Antoine Martel – Behringer Deepmind 12, Nord Electro, Korg Prologue 8, Moog Matriarch + Eurorack System, Moog Minotaur, guitar
Andrew Morrill – alto saxophone
Victory Nguyen – flute, tenor saxophone, soprano saxophone, trumpet
Scott Rixon – bass, guitar

Guests :
Theo Croker – trumpet (10)
Jacob Mann – lead synthesizer (7)
Jaleel Shaw – alto saxophone (2)
Brandee Younger – harp (9)

Additional Personnel :
Alex Dugdale – tenor saxophone (1, 2), bass clarinet (2, 6)
Greg Kramer – trombone (6)
Isaac Poole – trombone (1, 2, 6)
Jerome Smith – tuba (6), trombone (7)
Gehrig Uhles – guitar (3, 5)

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