カリブ×アメリカーナの才女レイラ・マッカラ、チェロもヴォーカルも深く美しい新譜

Leyla McCalla - Breaking the Thermometer

ハイチ系アメリカ人SSWレイラ・マッカラ新作

ハイチにルーツを持つ米国のSSW/マルチ弦楽器奏者のレイラ・マッカラ(Leyla McCalla)の新譜『Breaking the Thermometer』がリリースされた。ハイチ・クレオール語、フランス語、英語で歌われ、ハイチの伝統音楽やアメリカのジャズやフォークの影響がうかがえる、優雅さと素朴さを併せ持った独特の魅力を醸す。レイラ・マッカラはヴォーカルも魅力的だが、チェロやバンジョーなどの演奏も素晴らしく、小編成ながら総合的な完成度の高い作品となっている。

収録曲の多くはオリジナルだが、ハイチ系アメリカ人のフランツ・カセウス(Frantz Casseus)の(1)「Nan Fon Bwa」やハイチのSSWマンノ・シャールメイン(Manno Charlemagne)の(8)「Pouki」、亡命中のカエターノ・ヴェローゾ(Caetano Veloso)が1972年に発表した(9)「You Don’t Know Me」といったカヴァーも。

(6)「Dodinin」

バンドはチェロ/バンジョー/ギター/ヴォーカルのレイラのほか、打楽器が2人にベース、ギターという5人編成。ドラムスとパーカッションの2人がサウンド面では非常に効いており、カリブ海やアフリカのリズム感覚を全体に被せている。(1)「Nan Fon Bwa」や(7)「Ekzile」などで聴けるレイラのチェロの音色はピチカートもアルコも深みがあり美しい。

(2)「Fort Dimanche」など随所に挿入されたラジオ・ハイチの歴史的なサンプリングも効果的だ。これはハイチ出身のジャーナリスト、ミシェル・モンタス(Michele Montas, 2007年から2010年にかけて潘基文・元国連事務総長のスポークスマンも務めた人物)によって記録されたもので、ハイチの貧困や政治的抑圧に関する根深い問題を再び浮かび上がらせている。

Leyla McCalla プロフィール

レイラ・マッカラは1985年アメリカ合衆国ニューヨーク生まれ。両親は二人ともハイチ生まれ。十代の一時期はガーナに住んでいたことも。ニューヨーク大学でチェロや室内学を学んだ後、ニューオーリンズへ移り2011年から2013年までアメリカーナ・バンド、キャロライナ・チョコレート・ドロップス(The Carolina Chocolate Drops)のメンバーとして活躍したが、その後ソロに専念するためバンドを脱退。2013年に詩人ラングストン・ヒューズへのオマージュを捧げたソロデビュー作『Vari-Colored Songs』をリリースし、London Sunday Times and Songlines誌で年間ベストアルバムに選出されるなど絶賛された。

(11)「Vini Wè」

Leyla McCalla – vocal, cello, tenor banjo, guitar
Shawn Myers – drums, percussion
Pete Olynciw – bass, contrabass
Jeff Pierre – tanbou
Nahum Johnson Zdybel – guitar
Melissa Laveaux – vocal (8)

Leyla McCalla - Breaking the Thermometer
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