響き合うクラリネットとアコーディオンの美しさ。ミラバッシ×ザンキーニ新譜『猫と狐』

Gabriele Mirabassi & Simone Zanchini - Il Gatto E La Volpe

クラリネットとアコーディオンが響き合う『Il Gatto E La Volpe』

弦楽器とリード楽器の組み合わせも良いが、リード楽器×リード楽器の響き合いも素晴らしく良い。
クラリネットとアコーディオンという楽器は、見た目こそ全く違うもののいずれもリードの振動によって音が出る仕組みの楽器だ。片方は人間の息によって、もう片方は蛇腹で空気を送り込む勢いなどで音色や音量を調節する。

今回紹介するイタリアのクラリネット奏者ガブリエーレ・ミラバッシ(Gabriele Mirabassi)とアコーディオン奏者のシモーネ・ザンキーニ(Simone Zanchini)による初デュオ作品『Il Gatto E La Volpe』も、そんなリード楽器同士の繊細で豊かな音楽を存分に味わえる傑作である。それぞれの楽器で世界的なマエストロとして知られる二人の演奏は即興部分も含め素晴らしく完璧だが、ある意味で人間の業らしい不完全さや楽器の限界も僅かに垣間見え、それゆえにどこまでも美しい。

収録曲は二人の共作やそれぞれのオリジナルがほとんどを占め、米国のベース奏者のチャーリー・ヘイデンが作曲した(2)「Our Spanish Love Song」と、ブラジル北東部のアコーディオンの巨匠シヴーカ作曲の(8)「Un Tom para Jobim」がカヴァーとなっている。ショーロを意識したザンキーニ作曲の(1)「Choro Romagnolo」に象徴されるように、全体的にヨーロッパとブラジルの音楽に光を当て、情感の起伏も豊かに“歌う”。

(2)「Our Spanish Love Song」

Gabriele Mirabassi 略歴

クラリネットのガブリエーレ・ミラバッシ(Gabriele Mirabassi)は1967年イタリア・ペルージャ生まれ。チェンバー・ジャズの第一人者としてこれまでに数多くのアルバムを発表しており、エンリコ・ピエラヌンツィ(Enrico Pieranunzi)、マーク・ジョンソン(Marc Johnson)、スティーヴ・スワロウ(Steve Swallow)、ジョン・テイラー(John Taylor)といった国内外の著名アーティストとの共演も多数。イタリアを代表するジャズレーベル、EGEAの看板アーティストとして知られている。

ブラジル音楽にも強く傾倒し、これまでにギタリスト/作曲家のギンガ(Guinga)や、ピアニスト/作曲家のアンドレ・メマーリ(André Mehmari)、ギタリストのセルジオ・アサド(Sérgio Assad)といったブラジルを代表する音楽家たちとアルバムを制作してきた。
実弟は人気ピアニストのジョヴァンニ・ミラバッシ(Giovanni Mirabassi)。

Simone Zanchini 略歴

アコーディオンのシモーネ・ザンキーニは1973年イタリア・ノヴァフェルトリア生まれ。クラシック出身ながら革新的なアコーディオン奏者として知られ、ライブ・エレクトロニクスなども多用する。

これまでにトーマス・クラウセン(Thomas Clausen)、ジャンルイージ・トロヴェシ(Gianluigi Trovesi)、パオロ・フレス(Paolo Fresu)、ハビエル・ジロット(Javier Girotto)、ジョン・パティトゥッチ(John Patitucci)らと共演し、国内外の様々なジャズ・フェスティヴァルに出演。1995年以来、20枚のアルバムを録音している。

Gabriele Mirabassi – clarinet
Simone Zanchini – accordion

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