RTFを彷彿!? 現代ジャズを代表するフルート奏者マッタン・クレイン、ブラジル音楽を取り込んだ新譜

The Mattan Klein Quartet - The Long Run

現代ジャズ・フルート名手マッタン・クレインの新譜

イスラエル出身、バークリー音楽大学で学んだフルート奏者マッタン・クレイン(Mattan Klein)の3rdアルバム『The Long Run』(2022年)。現代的なジャズからコテコテのブラジル音楽・ショーロまで、知る人ぞ知る名フルーティストの妙技を楽しめる絶品となっている。この作品はもしかしたら、RTFの初期メンバーであるフルート奏者ジョー・ファレル(Joe Farrell)を想起させるかもしれない。

脇を固めるカルテットのメンバーはローズピアノのトキ・スターン(Toki Stern)、エレクトリック・ベースのヨニ・ベン・アリ(Yoni Ben Ari)、そしてブラジル出身の打楽器奏者のジョカ・ペルピナン(Joca Perpignan)。本作ではジョカ・ペルピナンが(3)「Jokes」でブラジルのハンドパーカッションのパンデイロを叩いたり、(2)「Otem Reh(y)」でブラジリアン・フュージョンなグルーヴを叩き出したりとリズム面で大きく貢献している。

ラスト(6)「O Farol Que Nos Guia」は本作で唯一のカヴァーで、ブラジルの鬼才エルメート・パスコアール(Hermeto Pascoal)の作曲。
米国とイスラエルで活動する彼にとって、ブラジルの音楽は遠いようでいて幼少期から慣れ親しんできた身近な音楽だったという。今回、カルテットにジョカ・ペルピナンを加えたことでその憧れを自身の音楽で具現化。トキ・スターン作曲のショーロ(3)「Jokes」や、パスコアールに捧げたというマッタン・クレイン作曲の(2)「Otem Reh(y)」の熱量でもブラジル音楽への愛情を感じ取ることができる。

(4)「The Long Run」では、ニツァン・バールがギターでゲスト参加している。

タイトルトラックの(4)「The Long Run」には天才ギタリスト、ニツァン・バール(Nitzan Bar)がゲスト参加している。

マッタン・クレインはジャズ・フルートにおけるあらゆる表現技法を用い、玄人好みの演奏を披露。
ローズピアノとフルート、そしてブラジリアンなドラマー/パーカッション奏者の参加という点では、チック・コリアのリターン・トゥ・フォーエヴァー(Return to Forever, 通称RTF)の現代版という見方もできるかもしれない。勿論、実際には当時のRTFの衝撃に及ぶほどのものではないかも知れないが、現代のジャズ・フルートの名手の紹介としては必要充分な作品に仕上がっていると言えるだろう。

ショーロに強くインスパイアされた(3)「Jokes」

Mattan Klein 略歴

マッタン・クレインは1973年にエルサレムで生まれ、10歳の頃からフルートを始め、故郷の都市のルービン・アカデミーで学んだ後、米国マサチューセッツ州ボストンの名門バークリー音楽大学に留学した。
バークリーを卒業後はアメリカとイスラエルの二拠点で活動しており、これまでに2枚のアルバムをリリース。「John Lennon Song Writing Contest」や「USA Song Writing Competition」を受賞するなど、作曲家としても高く評価されている。

Mattan Klein – flutes
Toki Stern – Rhodes, keyboards
Yoni Ben Ari – electric bass
Joca Perpignan – drums, percussion

Guest :
Nitzan Bar – guitar (4)

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