UK発。60年代トロピカリアに触発されたバンド Wax Machine、土埃と太陽の魅惑のサイケロック

Wax Machine - Hermit's Grove

魅惑のブラジリアン・サイケロック、Wax Machine

ブラジルに生まれ、イタリアとイギリスで育ったラウ(Lau)を中心とするイギリス・ブライトンのサイケロックバンド、ワックス・マシン(Wax Machine) のセルフプロデュースによる新譜『Hermit’s Grove』。サイケなロック・グルーヴとスピリチュアル・ジャズのエッセンスが心地良い、土埃や人々の体温、海から吹く風、そして燦々とした太陽の匂いのする作品だ。

彼らの最大のインスピレーションの源は1960年代のブラジルのトロピアカリアにある。当時のムタンチス(Os Mutantes)、カエターノ・ヴェローゾ(Caetano Veloso)、ガル・コスタ(Gal Costa)といった音楽のエッセンスが本作の中に凝縮されており、サウンド面でも60年代後半に回帰したような強いこだわりが感じられる。

(3)「Springtime」

バーデン・パウエル(Baden Powell)のカヴァーである(5)「Canto de Iemanjá」を除く全曲を書くマルチ奏者/ヴォーカリストのラウは8歳までブラジルで生まれ育ったが、その後はイタリア、イギリスに家族とともに移住したため祖国を訪れる機会がなかったという。その代わり彼は音楽にブラジルとの繋がりを求め、その文化や精神を自身の血肉としていった。歪んだギターやある種の粗さが魅力的なリズム隊に対して、イソベル・ジョーンズ(Isobel Jones)が吹くフルートは意外と素直で爽やかで美しい色彩感を与えており、その対比も面白い。

万華鏡のようなサウンドに、過去に置き忘れてきた社会の希望をみる。
さまざまな問題がありながらも活力に満ち、来るべき未来を掴もうと人々が我武者羅に動いていた時代の匂いが土埃と太陽の匂いのするサイケデリックな音楽に乗り、閉塞感が支配する時代に問いを投げかける。
ラウによると、今作は葬儀場の遺体安置所の真上にある小さなクローゼットの部屋でほとんどが録音され、ミキシングされたという。

Lau – guitars, bass, vocals, percussion, drums (3)
Toma Sapir – drums, percussion, samples, synths
Isobel Jones – flute, vocals
Adam Campbell – electric piano
Freddie Willatt – tenor saxophone
Marja Burchard – vibraphone (7)
Ella Russell – vocals (4)
Kate Mager – bass (4)

Wax Machine - Hermit's Grove
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