現代ミナス音楽の兄貴分ハファエル・マルチニが描く壮大な“現代ジャズ”

Rafael Martini - Martelo

ハファエル・マルチニ、壮大な風景を呼び起こす新譜『Martelo』

所謂“ミナス新世代”の最重要人物として日本でも高い人気を誇る鍵盤奏者/作曲家ハファエル・マルチニ(Rafael Martini)が、新譜『Martelo』をリリースした。セクステットの編成はハファエルの鍵盤のほか、クラリネットのジョアナ・ケイロス(Joana Queiroz)、ヴァイオリンのルカ・ミラノヴィック(Luka Milanovic)、チェロのフェリピ・ジョゼ(Felipe José)、ドラムスには曲によってアントニオ・ロウレイロ(Antonio Loureiro)もしくはフェリピ・コンチネンチーノ(Felipe Continentino)、そして電子エフェクトなどエレクトロニクスにペドロ・ドゥランエス(Pedro Durães)というお馴染みの精鋭たちを集めている。

収録曲は5曲だが、短くても7分、(1)「Martelo」に至っては約13分という長大な作品ばかりとなっており、ビッグバンドやラージアンサンブルのアレンジを得意とするハファエル・マルチニのリーダー作らしい凝りに凝った構成が魅力的だ。かといって決してクラシカルではなく、編成にエレクトロがあることに象徴されるようにプログレや現代音楽、ロックなどを経由した非常に斬新な音楽が面白い。電子音と現代的なロウレイロのドラミングと、クラリネット、ヴァイオリン、チェロといった古典的な楽器のサウンドが、大雑把に一言でいうと“現代ジャズ”の中で混ざり合う。
室内楽的な面、ときおり見せるエキサイティングな混沌、そうしたもの全て含め“美しい”と感じさせる、ある種のカタルシスに満ちた稀有な作品となっている。

(1)「Martelo」のライヴ演奏動画。本作のための書き下ろしではなく、数年前からライヴでは演奏されていた楽曲だ。

現代ミナス音楽の兄貴分的な存在感のハファエル・マルチニの魅力が凝縮された作品と言えそうだ。

Rafael Martini プロフィール

ハファエル・マルチニはブラジル・ミナスジェライス州都ベロオリゾンチ出身のピアニスト/作編曲家。
2013年の初リーダー作『Motivo』は最優秀器楽アルバムとしてマルコ・アントニオ・アラウージョ賞を受賞。先鋭的なインスト楽団ミストゥラダ・オルケストラやグルーポ・ハモといったグループでの活動で知られ、多くの作品にプロデューサーやピアニストとして参加、ミナス・ジェライス連邦大学(UFMG)の音楽科では教鞭も取り、若手音楽家の活動にも精力的に関わるなど、まさに現代ミナス音楽シーンの中心的な存在である。

Rafael Martini – piano, synthesizer
Joana Queiroz – clarinet, clarone
Luka Milanovic – violin
Felipe José – cello
Antonio Loureiro – drums
Felipe Continentino – drums
Pedro Durães – electronics, programming

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