アフロ・カリビアンのリズムで蘇るクラシック
米国のピアニスト/作編曲家ヨアヒム・ホースリー(Joachim Horsley)の最新作『Caribbean Nocturnes』は、ベートーヴェンやモーツァルト、ショパンなどの西洋クラシックをルンバ、ソン、ズークといったアフロ・カリビアン音楽に持ち込んでしまった野心的なプロジェクトの第二弾だ。
これまでもヴードゥーの呪術的な「ハイチ風モルダウ」やヒッチコックの名作『サイコ』のテーマ音楽をナイフも用いてピアノ・カヴァーするなど一風変わった感性で話題になってきた彼を知っていれば今回のアルバムのテーマも特段驚くべきものではないかもしれないが、やはり実際の曲を聴いてみればあのクラシックがこんな風に料理されてしまうのか!といった新鮮な感動があるし、単に“クラシックの〇〇風アレンジ”のようなチープさはなく、オリジナルな部分も多い編曲や演奏のクオリティの高さは見事だ。
演奏を共にするのはキューバ、ハイチ、ベネズエラ、コロンビア、フランス、マルティニークなどから集った演奏家たちで、さらには米国のいくつかのオーケストラがサウンドをより彩る。メンデルスゾーンをソン風に演奏した(5)「Mendel’s Son」など随所に散りばめられたユーモアも微笑ましく、聴いていて思わず笑顔になってしまう楽しい作品だ(ミュージックヴィデオでは演奏者たちもとても楽しそう!)。
Joachim Horsley プロフィール
ヨアヒム・ホースリーは幼少期よりビートルズ、スティーヴィー・ワンダー、チャック・ベリー、バッハ、ワーグナー、ショパンなどを平等に愛する一家で育った。ティーンエイジャーの頃から作曲を始め、ジャズの巨匠デイヴ・ブルーベックの息子であるクリス・ブルーベックにジャズピアノを師事している。
プロとして様々な実績を残しているが、近年は映像音楽の仕事が多くHBO Max シリーズの『The Gordita Chronicles』、ディズニー チャンネルの『Big City Greens』ワーナーブラザーズの映画『Batman: Soul of the Dragon』などの音楽を担当。
2019年にリリースした『Via Havana』はクラシックをアフロ・カリビアン音楽のリズムで再構築し、評論家たちから傑作と絶賛された。