パリ発の中東サイケロックバンド、Al-Qasar デビューアルバム
フランス・パリで結成された“アラビアン・ファズ”バンド、アル・カサール(Al-Qasar)のデビュー作『Who Are We?』が最高に面白い。バンドリーダー/作曲家でエレクトリック・サズやギター、鍵盤を担当するトマ・アタル・ベリエ(Thomas Attar Bellier)はロサンゼルス、パリ、ニューヨーク、リスボンといった国際都市に住んできた経験から、多様な人々に調和する音楽をつくりたいと願っていた。そんな彼のもとにモロッコ出身でグナワの伝統を受け継ぐジャウアド・エル・ガルージュ(Jaouad El Garouge)らが加わり、ガレージロックと中東音楽を融合させたサウンドが誕生。急速に混ざりゆく世界の今を描いた傑作を生み出した。
アラビア語の歌詞はには権力、抑圧、難民といった問題だけでなく、自由と情熱についても歌っている。Sonic Youthのリー・ラナルド(Lee Ranaldo)やDead Kennedysのジェロ・ビアフラ(Jello Biafra)といった米国のパンク界隈からや、アルジェリアのウード奏者/SSWのメディ・ハダブ(Mehdi Haddab)、エジプトの歌手ヘンド・エラウィ(Hend El Rawy)、スーダン出身の歌手アルサラー(Alsarah)といった多様なゲストが参加。
サウンドは伝統音楽をベースにしてはいるが、エレクトリックなどの現代的要素が強く西洋音楽に慣れすぎてしまった耳にも馴染みが良い。リー・ラナルドのノイジーなギターも効果的で、グナワのようなリズムでトランス状態へと誘う(2)「Awal」、4+3+4の11拍子とアラビックな旋律・パーカッションが印象的な(3)「Ya Malak」、そして母国スーダンの不安定な政治に対する抗議の声を発し続けるアルサラーによる力強くも悲痛な歌唱が響く(4)「Ya Malak」、ウードの革新者メディ・ハダブのソロがたっぷりと聴ける(6)「Ya Malak」などなど、音楽的にも興味深い楽曲が並んでいる。
今作は2022年10月度のトランスグローバル・ワールド・ミュージック・チャートで1位を獲得している。
Thomas Attar Bellier – electric saz, guiters, keys
Jaouad El Garouge – vocals, awtar, karkabou, tbila, bendir, claves, caxixi, cowbell
Guillaume Théoden – bass, sub bass
Nicolas Derolin – darbuka, daf, bongos, bendir, shakers, saget
Paul Void – drums